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OTのスゴ技(作業療法士)認知症の人が住みやすい町は、誰もが住みやすい

 「認知症の人たちにやさしい図書館づくり」の動きが、全国に広がってきている。仕掛け人である九州保健福祉大学教授で作業療法士の小川敬之さんに、話を聞いた。そこから飛び出してきたのは、図書館だけでなく、町全体を「認知症にやさしい」ものにしていこうという考え方、さらには地域を高齢者、障害者、そして誰にとっても住みやすいものにしていこうという構想だった。

認知症の人が住みやすい町は、誰もが住みやすい

 「認知症の人たちにやさしい図書館」づくりは、小川さんが勤務する九州保健福祉大学(宮崎県延岡市)での試行からはじまり、その後宮崎県日向市のコミュニティセンターに併設された小さな図書室に広がった。「もともとは知人がイギリスに視察に行った時に見た取り組みを聞き、日本にも広げたいと大学で試みた後、近隣の自治体に相談し、まずはコミュニティセンターの図書室ではじめることになりました」。認知症に関するコーナーを設け、子ども向けに認知症について解説する絵本や認知症に関する本などを集め、認知症の方やその家族が、気軽に認知症についての情報を得ることができる。周囲に認知症の方がいない人であってもそれらの本を手にすることで、認知症に対する理解が促進される。さらに、認知症のことを相談できるスタッフがいる(月1回)ことで、認知症の方やその家族の相談を受け付け、地域の医療や福祉など支援につなげることもできる。現在では、宮崎県延岡市(展示イベント)、神奈川県川崎市宮前区(小さな認知症図書コーナー)などの図書館でも取り組みが始まっている。ゆったりと本を読んでもらえるようなスペースを設けたり、カフェを設置したり、巡回バスの移動図書館にも認知症のコーナーを設けたりと、自治体ごとにさまざまな工夫をこらしてもいる。小川さんは作業療法士として選本のアドバイスや、「みんなが気軽に立ち寄れる、居心地のいい場所」にするための環境調整の提案をしている。

 「認知症で大きいのが、『スティグマ』の問題です。『スティグマ』とは、認知症疾患があるだけでその人が色眼鏡で見られてしまう『偏見』のこと。日本では、周囲の人たちはもちろん、家族や自分自身でさえ、『認知症は迷惑だ、恥ずかしいことだ』、『認知症になったら、外を出歩いてはいけない』といった思い込みを持ってしまいがちです。ところがイギリスでは、認知症は成人病などと同じ、単なる一つの疾患でしかありません」と小川さんは「認知症にやさしい図書館づくり」の狙いを話す。認知症になっても地域で安心して、その人らしい暮らしを送り続けるためには、この「スティグマ」をどう払拭するのかを考える必要がある。「認知症にやさしい図書館」づくりは、そのためにも必要なのだ。「図書館は、知的メッセージを発信し、誰もが集える場所。認知症に全く関係のない人や子どもも来る。何気なく認知症のことに触れる機会にもなる。多くの人に認知症の理解を深めてもらうには最適な場所です」。全国には、およそ3300の公共図書館がある。町にあって、誰もが訪れることのできる図書館を拠点として、認知症の方も、地域に暮らす人たちも認知症への理解を深めていく。そうすると、結果としてその町全体が「認知症にやさしい町」になっていく。「この取り組みをはじめてから、参加した方から『ここに来てよかった、今まで生きづらかったけど、気持ちが楽になりました』という声をいただきました」。

認知症の人が住みやすい町は、誰もが住みやすい

 特に地方では今後人口減が進み、地域の医療や福祉をどうやって支えていくのかは、大きな課題となっている。「認知症にやさしい図書館」は、病気や障害を抱えていても、地域で安心してその人らしい暮らしを送っていくための環境づくりの一環であり、重要な社会資源である。これからの地域のあるべき姿を考えるうえで、重要な取り組みだ。

■施設情報
九州保健福祉大学
〒882-8508 宮崎県延岡市吉野町1714-1
電話:0982-23-5555(代表)

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