Close

ページの先頭です。

作業療法士の支援を受ける

HOME > 作業療法士の支援を受ける > TEAM OT > がん患者の「生活の質」を高める、緩和ケアチームで働く作業療法士

TEAM OTがん患者の「生活の質」を高める、緩和ケアチームで働く作業療法士

大阪府済生会富田林病院・緩和ケアチーム 島崎寛将さん

 がん医療の分野で近年注目を集めている「緩和ケア」。がん患者の苦痛をやわらげるだけでなく、患者家族の不安に対してもケアを行うことで、患者とその家族の「生活の質」を向上させることを目的として、医療的・福祉的・心理的なケアが行われる「緩和ケア」の現場で活躍する作業療法士がいるという。その役割とはいったい、どんなものだろうか?

がん患者の「生活の質」を高める、緩和ケアチームで働く作業療法士

 大阪府済生会富田林病院は、富田林市が開設し、社会福祉法人大阪府済生会が運営する公設民営型の病院である。地域医療を担う中核病院として、各種の診療科を持つ総合病院だ。富田林病院は、「大阪府指定がん診療拠点病院」に指定されており、がんに対して総合的な医療サービスを提供できる機能を持っている。その機能の一つとして設置されている「緩和ケアチーム」では、主にがん患者の痛みなどの身体的な苦しみを和らげると同時に、患者とその家族の精神的な不安・苦痛に対するケアも行う。作業療法士の島崎寛将さんは、緩和ケアチームの一員として、がん患者と向き合う毎日を送っている。

 毎週水曜日には、緩和ケアチームのメンバーが集まって「回診」が行われる。チーム内で、現在担当している患者の状況を情報共有し、今後の治療方針についての相談が行われる。医師をはじめ、看護師、薬剤師、社会福祉士、管理栄養士、理学療法士、そして作業療法士などが出席し、それぞれの立場から意見を交換する。回診の場で話される内容は実に様々だ。たとえば、痛みを訴えるある患者に対して、「痛み止めの薬の投与まであと30分あるから我慢してね」という病棟看護師の対応に対し「正しいけれど、杓子定規すぎるのではないか」という意見が緩和ケアチームから出された。そこでがん性疼痛看護認定看護師や薬剤師を中心に、痛み止めの薬の効き目が切れてきた時の対応についての考え方や、あるいはそうしたときに処方できる別の薬はないか、などについて話し合った。

 また、かなりがんが進行している患者の一時帰宅の可能性についても意見が交わされた。自力で歩くことができず、車いすでの移動になるが、集合住宅である自宅の前に20段ほどの階段があり、そこをどう乗り越えていくかが課題になる。島崎さんが、ネットの地図サービスで調べてきた現地の写真をもとにどのようなリハビリテーションを行えば一時帰宅が可能になるのかについて話す。すると医師や薬剤師からは、一時帰宅の際の医療的なリスクや投薬の考え方について意見が出される。また別の患者について、病状の進行と患者本人の希望から考えたら、歩けるようになるためのリハビリテーションよりも、トイレに自力で行けるようになるためのリハビリテーションを優先すべきではないか、という提案が、島崎さんからあった。患者の状況によっては、管理栄養士から日々の食事についての提案や相談、また社会福祉士から制度利用についての提案などもあり、様々な角度からの検討が行われる。

がん患者の「生活の質」を高める、緩和ケアチームで働く作業療法士

 進行がんの患者にとって、入院・治療の目標は「回復して社会生活が送れるようになること」であるとは限らない。「穏やかに残された日々を過ごすこと」が目標の人もいれば「最後までできるだけ人に迷惑をかけずに生きること」が目標の人もいる。患者一人ひとりの異なる目標を明らかにし、共有することから、緩和ケアチームの活動はスタートする。このとき、患者や家族と密なコミュニケーションをとることのできる看護師が、希望や目標の聞き取り役を担うことが多い。「私たち看護師は、患者さんの気持ちに寄り添い、やりたいことを聞き取ることを大切にしています。作業療法士は、その気持ちに、具体的な選択肢を与えてくれる重要な役割だと思っています」と、がん性疼痛看護認定看護師として、多くのがん患者と向き合ってきた多田都子さんは言う。一時帰宅などがよい例だが、患者が希望していることは、医療的に見れば体に負担がかかることであることも少なくないため、医師の立場からはなかなかOKを出しづらい時もあるという。そんな時、医学的な知見を持ち、人の生活を作業として分析できる作業療法士は「このようにすれば、体の負荷を最小限にして患者の希望をかなえることができる」という方法を、具体的に提案してくれる。

 「患者一人ひとりの生活を見つめ、分析し、課題とその解決方法を考えることは、作業療法士の得意なことです。緩和ケアが主体となる時期のがん患者は、ともするとリハビリテーションの領域ではないのではないかと思われがちですが、この時期のがん作業療法に携わるようになって、これこそが作業療法士の仕事ではないか、と思うようになりました」。と島崎さん。回復が難しいからこそ、残された時間をどのように過ごすかが大切になってくる。がん患者の「生活の質」を高めるために、緩和ケアの現場にも、作業療法士の知識と経験が求められている。

■施設情報
大阪府済生会富田林病院
〒584-0082 大阪府富田林市向陽台1-3-36
電話:0721-29-1121(代表)

ページトップへ