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TEAM OT地域がチーム。「精神科アウトリーチ」と作業療法士

国保旭中央病院・片倉知雄さん

 精神障害者が地域で安心して暮らすために、病院がチームを組んで患者を支え、早期退院・地域移行を促す取り組みが、千葉県で行われている。「精神科アウトリーチ」のチームと、その中で働く作業療法士を訪ねた。

朝、その日の訪問先と担当を確認する。左端が片倉さん。

 千葉県旭市の国保旭中央病院は、近年精神科の「アウトリーチ」で話題を呼んでいる。旭中央病院の精神科ではこのアウトリーチに力を入れており、外来診療の他に「CMHT(訪問・地域生活支援チーム)」を作っている。作業療法士の片倉知雄さんはチームリーダーとして、さまざまな職種をまとめながら、国保旭中央病院のアウトリーチの牽引役になっている。

 「ここ数年で、精神科病院の病床数を減らしていこうという動きがあります」と片倉さん。精神疾患のある患者は、長期入院するのではなく、病気と付き合いながらなるべく地域で生活していくべきだという考え方が主流になりつつある。その中で出てきたのが「アウトリーチ」という考え方だ。「アウトリーチ」とは「手を伸ばす」という意味で、医療や福祉の分野では、病院や施設から地域に出て、患者や当事者のところで活動をすることを意味する。さまざまなスタイルのアウトリーチがあるが、旭中央病院のアウトリーチには、①重症者向けの②多職種による③医療も生活も総合的に評価・支援していくスタイルを取っていることに特色がある。「ACT(Assertive Community Treatment/包括型地域生活支援プログラム)」と呼ばれるもので、1970年代にアメリカで生まれた手法をベースにしている。医療的支援も、生活支援も、生活環境・家庭環境などの評価も包括的に行うことで、対象者に対してより有効な支援ができる。アウトリーチは、病院だけでできる話ではないと、片倉さんは言う。「たとえば、患者が安心して地域で暮らすためになによりも大切なのは『住まい』です。これは病院では用意できない。そこで地域の社会福祉法人やNPOと連携し、グループホームなど退院後の住環境を整備していく必要があるのです」。住まいの次は、仕事。となれば就労支援事業者との連携も必要になってくる。患者が地域で安定した生活を送るための基盤づくりが必要だが、それには地域の社会資源との連携が欠かせない。その意味では地域も、アウトリーチの「チーム」の一員だ。

 入院が長引けば長引くほど、地域での生活に慣れるのが難しくなる。そこで片倉さんたちは、入院チームと連携し、急性症状で患者が入院した時点から、早期退院・地域移行の流れを作っている。常に情報を共有し、どのタイミングで、どのような形で地域生活へと移行するのかを検討し、またグループホームや就労支援機関などとも調整をしながら、地域生活の「受け皿」を作る。その結果、国保旭中央病院では、かなり重度の精神障害があり、通常では入院が必要と判断される患者でも、地域生活を送ることができているという。

 チームには、作業療法士のほか、看護師、精神保健福祉士などが所属している。2017年6月から、精神疾患があり、現在も通院中の「ピアスタッフ」も採用した。さらに医師や臨床心理士には、チームの外からアドバイスをしてもらう。訪問や患者への対応で求められることは、職種によって大きく変わるわけではない。だからチームの人たちは、自分の職種に関係なく、医学的な知見も、薬学的な知見も、ケースマネジメントの技法などについても学習会などを開いて定期的に必要な知識を習得している。患者の状況を報告しあい、対応を検討する「ケース会議」などでは、誰が看護師で、誰が精神保健福祉士で、誰が作業療法士なのかわからないほどだ。それでも「1人を多職種で支えることが大切です」と片倉さんは言う。複数の、角度の違う視点から1人の患者を見ることで、より正確な評価ができる。

 チームの中で作業療法士に求められる役割は「その人の暮らしぶりを評価することです」と片倉さんは言う。精神障害者の場合「きちんと服薬ができない」、「家の掃除ができない」、「買い物ができない」といった場面に課題を抱えることが多い。作業療法士には、その人の状態を正確に評価し、課題解決の手法を提案する役割が求められる。「もちろん他の職種の人にもできることではあります。しかし、作業療法士の正確な評価と豊かな知見が、他の人の助けになることが多いんです」。また、就労についても作業療法士の果たす役割は大きいという。「たとえば統合失調症患者には、認知障害があり、それが就労の妨げになっていることが少なくありません。障害の状態を適切に評価し、職場の環境調整などで働くことのできる状況を生み出せる作業療法士の職能は、精神障害者の地域生活を考える上でこれからますます重要になってくると考えています」。

 精神障害があっても、地域の中で安心して暮らすことができる社会へ。そのために、病院が動きはじめている。作業療法士には、その中で患者の暮らしを支え、地域とのつなぎ役になることが期待されている。

■施設情報
地方独立行政法人 総合病院 国保旭中央病院
〒289-2511 千葉県旭市イ-1326
電話:0479-63-8111

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