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TEAM OT精神・心理的なアプローチで、糖尿病患者の生活を変える作業療法

医療法人光陽会 関東病院 成田雄一さん

 糖尿病の治療においては、患者の生活習慣をどう変容させるのかが重要になってくる。これまであまり関わることのなかった作業療法士が糖尿病治療のチームに加わることで、患者の「心」に働きかけ、行動の変容を促す可能性が広がるという。糖尿病のチーム医療に関わる作業療法士に話を聞いた。

精神・心理的なアプローチで、糖尿病患者の生活を変える作業療法

 「完治」が難しい病、糖尿病。これまでと生活習慣を大きく変えることを余儀なくされ、環境の変化にストレスを感じる人もいる。また重篤化すればさまざまな合併症状を引き起こすため、長年にわたって病気と付き合い病状を管理しながらの生活が続く。継続的に身体に大きな負担がかかる病気だ。近年、日本人の生活習慣の変化もあって、糖尿病患者は増加しているという。糖尿病の治療は一般的に「食事」「運動」の両面から生活習慣を見直し、それと「投薬」を組み合わせる、いわゆる「三本柱」で行われることが一般的だ。「しかし近年、患者の『精神・心理』へのアプローチが注目されているのです」と話すのは、関東病院の糖尿病チームに関わる作業療法士、成田雄一さんだ。

 糖尿病の治療にあたっては他職種連携によるチーム医療が有効とされる。管理栄養士が「食事」を、理学療法士が「運動」をケアする。全体を統括し「投薬」の管理もする医師の下、患者の生活面を見る看護師も加えたチームが構成されることが普通だ。成田さんのように作業療法士が糖尿病のチーム医療に参画することはまだ珍しいという。

 重篤化した糖尿病患者は、「教育入院」と呼ばれる2週間の入院をし、病状を診断すると同時に「食事」「運動」「投薬」を指導され、生活習慣の改善に取り組む。作業療法士である成田さんは、この教育入院の期間中、患者の精神・心理面の変化を評価し、生活の改善につなげるように関わっていく。糖尿病の診断をされてしまったと精神的に落ち込んだり、この先の生活に対しての不安を抱える患者も多いことから、「PAID」と呼ばれるストレスチェックや、いわゆる「QOL(生活の質)」の評価などによって、糖尿病や合併症、あるいは治療などが患者の身体や精神・心理に影響を及ぼしていないかを評価する。

 しかし成田さんがひときわ重視しているのが、「生活行為向上マネジメント(MTDLP)(※)」の興味・関心チェックシートを活用した患者の現状評価と生活の目標設定だ。「ともすると、患者も、治療に携わる医療関係者も、検査数値を維持・向上させることが目的化してしまい、数字の上下に一喜一憂することになってしまう。そうではなく、糖尿病患者には、自分の生活イメージを変えないといけないという『気づき』をもってもらう必要があります。それが行動の変容につながるのです」。「生活行為向上マネジメント(MTDLP)」を活用し、患者や家族が「今後どうしていきたいか、どう生きていきたいのか」を考え、共有する。そこから逆に「今どうすればよいのか」、「治療にどう向き合えばよいのか」に気づいてもらう。その人の生活を評価し、その人らしさを維持・向上させる作業療法士ならではの視点を活かして、糖尿病治療に主体的に向き合ってもらうのだという。

 さらに成田さんは、協働する他職種に対して、作業療法士ならではの視点で情報提供をし、時には連携した介入も行う。たとえば、成田さんとともに糖尿病治療チームに携わる管理栄養士の毛利悦子さんはこう話す。「糖尿病の治療においては、患者の立場に立って、押しつけずに一緒に改善する、という姿勢が必要です。栄養指導の現場でも『食事は、買い物をするときから気を付けよう』と指導はします。しかし退院後の生活の場でどのように実行するか、までは関わることができませんでした。でも作業療法士がチームにいると、患者の買い物に実際に立ち会い指導することで、その人にとって手に入れやすい食材のなかで治療に適したものを探したり、調理をリハビリテーションに取り入れ、それぞれの能力や意欲に応じた調理の仕方を一緒に考えたりする。それぞれの患者が、自分の生活に適したかたちで食事療法を実行できるようになるんです」。また、理学療法士の宗村明子さんは「運動療法において一番の課題は『継続』なんです。続けてくれないと意味がない。その意味では患者の精神・心理や生活にまで関わり、暮らしのなかで続けられる運動のあり方を患者と一緒に探す作業療法の方法論は、大変有効だと感じています」と話す。

 「糖尿病治療に、精神・心理的な視点からのかかわりが必要なことは、以前からわかっていました」と話すのは、医師の藤崎公達(きみさと)さんだ。「以前いた病院で作業療法士と出会って、彼らならばそれができるのではないかと思ったんです。糖尿病という疾病の全体を理解しながら、患者の気持ちに関わることができる作業療法士は、今後もっと糖尿病の治療に関わるべきだと思っています」。

 糖尿病患者の生活を評価し、心に働きかけることで、意識の変容を促し、それが行動の変容につながる。作業療法士の働きが、糖尿病のチーム医療に新しい可能性をもたらすことだろう。

※ 生活行為向上マネジメント(MTDLP):作業療法士の一つの臨床思考過程を説明したものであり、本人にとって、「やりたい」と思っている生活行為に焦点を当てたマネジメントツール。

生活行為向上マネジメント

■施設情報
医療法人光陽会 関東病院
〒235-0023
神奈川県横浜市磯子区森1丁目16-26

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