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作業療法士になるには

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こんなところで!作業療法士地域が主人公、作業療法士が支える「健康づくり」

津山市役所

 岡山県津山市で実施されている介護予防事業「こけないからだ講座」。主に高齢者を対象に、重りをつけ、童謡などを歌いながらゆっくりと体を動かすことで、転倒しない体をつくろうという運動プログラムだ。この「こけないからだ講座」が全国的に有名なのは、人口10万人余りの同市で、年間にのべ10万人以上が参加し、現在では市内194会場で実施されているという、驚異的な参加率の高さに理由がある。「こけないからだ講座」の運営は、「地域リーダー」と呼ばれる、各地域のボランティアが担う。今でこそ注目を集める、地域づくりと介護予防を融合する取り組みだが、津山市では、今から10年以上前に、健康増進課に所属する1人の作業療法士によって構想されていた。「こけないからだ講座」の運営に携わるチームに、話を聞いた。

地域が主人公、作業療法士が支える「健康づくり」

作業療法士 厚生労働省では、平成26年度(2014年度)から「地域づくりによる介護予防推進支援事業」として、各地域に暮らす高齢者の健康づくりがコミュニティづくりにつながるような事業を展開しています。実は津山市では、2008年度から同じ趣旨の事業に取り組んでいるわけで、それが「こけないからだ講座」ということになります。ただし、この「こけないからだ講座」の最大の特徴は、行政主導ではなく、「地域リーダー」と呼ばれるボランティアさんを中心とした、地域が主体となった事業である、というところにあります。私は作業療法士として、リハビリテーションの知識や経験を活かし、「地域リーダー」の皆さんが講座内容を作り上げたり、講座を運営する支援をしています。今日はお二人の「地域リーダー」にお越しいただいています。

津山市役所健康増進課 作業療法士:安本勝博さん

津山市役所健康増進課 作業療法士:安本勝博さん

地域リーダーA 私は、2006年に開催されたサポーター養成講座から参加しています。実はそれまでは津山市役所で働いていました。ですから、市の介護予防の財政が逼迫していて、なにかしなければいけない、という状況はよく知っていました。2008年からこの取り組みが実際に立ち上がるのですが、その2年前の2006年から、サポーター養成講座などを通じ、住民参加を前提として津山市が動いていた、ということが、素晴らしいことだと思っています。たいていの取り組みは行政主導になりがちですよね。津山市の場合、原型となる素案は行政から提示されましたが、具体的なプログラム内容は、もちろん安本さんのような専門職や、美作大学の教授などの意見も聞きながら、養成講座の中で住民同士が意見を出し合い、決めていきました。

地域リーダーA:山本節子さん

地域リーダーA:山本節子さん

作業療法士 当初から、行政主体ではなく、住民が自分たちで地域に広げていくことを、専門職も含めた行政側がお手伝いして、というスタイルにはこだわっていました。

地域リーダーA それで、3か月間のプログラムを作って実行してみたら、最初の日にはとてもむずかしい顔をして参加されていた高齢の男性が、終わるころには涙を流して「同窓会がしたい」って言ってくださって。私もすごく感動したんですよ。人が変わっていく様子に。やっぱり「はい、手を上げて」「次はこれをやって」なんて指示をしていたのでは、効果的なリハビリテーションはできないということがよくわかりました。もちろん取り組みの周知や運営サポートは行政にやっていただきましたが、プログラムの内容、たとえば「歌を歌いながら運動する」とか「ついでに血圧も測ろう」とか「生活目標を立てよう」とか。作業療法士さんの視点も取り入れながら、みんなで作り上げたプログラムの内容がよかったから、ここまで広がったんだと思います。

作業療法士 もうお一人、廣本さんは、私が津山市役所に入る前からずっと様々な地域活動をなさってきた方です。私も以前から、お名前はよく耳にしていました。今回の取り組みでも、早い段階から手を上げてくださって。

地域リーダーB 今日、ここに来る前も「こけないからだ講座」をやっていたんですけど、なんにも言っていないのに「この体操、やってよかった。あがらない手も、あがるようになったよ」っておっしゃる方がいて。手応えがあるから続いているんですよね。私自身も、以前よりも体が動くようになったな、って感じるくらい(笑)。前に出て率先してやらなければならない立場ですから、自然と背筋が伸びるということもありますけれど。

地域リーダーB:廣本美智子さん

地域リーダーB:廣本美智子さん

作業療法士 参加した方みなさんがそれぞれ元気になることはもちろん、活動を通じて地域が元気になったり、人と人とがつながったりすることが大きいですよね。

地域リーダーA そうなんです。よくある高齢者の健康づくりプログラムなんて、十数人の高齢者が黙々と運動していて、なにか異様な雰囲気(笑)。

地域リーダーB 「こけないからだ講座」には、なにか体操だけじゃないよさ、魅力があるんですよ。本当はみんな寂しいから、お話がしたいんですよね。そこに行けば、人と出会えて、地域とかかわれる。そんな場所になっているんでしょうね。安本さん、「こけないからだ講座」をはじめた時、今みたいに体操だけじゃなく、地域の人たちが集まる場所になる、と予想していたんですか?

作業療法士 この取り組みを考えはじめた当時、介護予防は、マシンに乗って筋肉をつける、というやり方が盛んでした。でも、マシンはたいてい高価ですから、各市町村に一台くらいしか置くことができない。そこにお年寄りに来てもらうなんてとてもじゃないけど無理です。だから、各地域の高齢者が、歩いていける距離でできる健康づくりの取り組みを考えたかった。体を鍛える、というだけじゃなくて、それを手段にみんなが地域の中で集まって交流できて、安心できる場所、つまり、「からだとこころとお付き合い」が元気になる場所をたくさん作りたい、という思いはありました。

高齢介護課 私は高齢介護課に異動してから5年間、「こけないからだ講座」に関わっています。立ち上げに関わった皆さんの思いを受け継ぎつつ、たとえば、高齢者が多くそれを支援する比較的若い層がなかなか増えない、ですとか、新規の参加者や参加団体が増えないといった今の「こけないからだ講座」が抱える課題にも取り組んでいかなければ、と思っています。

津山市役所高齢介護課:三浦千明さん

津山市役所高齢介護課:三浦千明さん

保健師 私たち地域包括支援センターは、高齢者の総合相談窓口です。私たちには、各地域に1人ずつ、介護予防を担当している職員がいます。定期的に高齢者を訪問し、変わったことはないかなど状況を確認しながら、同時に健康づくりのための情報などをお伝えしています。私たちも、地域づくりを支援するという立場から「こけないからだ講座」の運営をお手伝いさせていただいているのですが、その場で、私たちが定期訪問しただけではわからない、地域に暮らす高齢者の困りごとや気になることなど、とてもいい情報がいただけることがあるんです。私たちにとっても、地域の様子がわかる大事な場だな、と思っています。

津山市地域包括支援センター 保健師:高見京子さん

津山市地域包括支援センター 保健師:高見京子さん

作業療法士 仕組みを考えたのは確かにわれわれ行政ですが、それを実現し、地域の皆さんが集まる「場」に育てたのは、サポーターと言われる地域の方々、さらに効果や楽しさを実感している参加者の皆さんです。作業療法というと、いわゆる個人に対する支援・リハビリテーションをイメージされる方が多いと思います。それだけでなく、この「こけないからだ講座」のように、みんなが地域の中でつながり、活性化していくための仕組みを作ることで、地域の皆さんを支援していくことも、私たち作業療法士の重要な仕事の一つだと、私は考えています。これからも「住民が住民と住民で健康になる」に寄与できれば、とてもうれしいですね。

■施設情報
津山市役所 健康増進課
〒708-8501岡山県津山市山北520
電話: 0868-32-2069

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