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こんなところで!作業療法士認知症の方が、地域の中でよりよく生活をするために

訪問看護ステーション ユニネット・まちかど 森奈奈さん

 「認知症対応型カフェ(以下『認知症カフェ』)」をご存じだろうか? 認知症の方とその家族を中心に、当事者や家族同士、地域の方々、あるいは医療・福祉の専門職との出会いの場、交流の場として、近年注目されている取り組みだ。認知症カフェに携わる作業療法士を取材した。

認知症の方が、地域の中でよりよく生活をするために

 京都府宇治市、駅から徒歩20分と、少し離れたところにあるカフェ。ある日曜日の午後、その小さなカフェは、多くの人で賑わっていた。入り口の看板には「ようこそ、れもんカフェへ」の文字。「れもんカフェ」とは、宇治市内で開催されている「認知症カフェ」の名称だ。この日は、認知症の当事者、あるいはその家族を中心に、30人以上の人が「れもんカフェ」に集まった。

 「カフェ」と言っても常設された場所があることは少なく、カフェや公民館などのスペースを借り、イベントとして開催されることが多い。孤立しがちな認知症の方とその家族が一緒に参加できる機会として貴重であり、同じ立場同士がつながることのできる場所として、また施設や医療機関ではない場所で福祉や医療の専門職と出会える場所として近年注目を集め、全国各地で開かれるようになってきた。宇治市では「れもんカフェ」という名称で、年に30数回、市内の各地で開催されている。「れもんカフェ」は、地域包括支援センターが主体となって運営しているが、全国では社会福祉法人やNPOが運営する認知症カフェもあり、その運営形態は様々だ。

認知症の方が、地域の中でよりよく生活をするために

 この日の「れもんカフェ」は3部構成。第1部には京都府立洛南病院の精神科の医師からの話で、地域の人たちに認知症について知ってもらうことや、認知症の方への理解を深めてもらうことの大切さ、また実際の取組事例について話された。第2部は有志によるコンサート、第3部はお茶とケーキを楽しみながらのフリートークとなった。「認知症カフェ」の内容についてはこれといった決まりはなく、地域や運営主体によってさまざまだが、多くの「認知症カフェ」では、「れもんカフェ」のように、「医師や専門職による講義・セミナー」「コンサートや落語などのお楽しみエンターテインメント」、「交流を目的としたフリートーク」の3部構成を取るところが多いという。

 京都市内の訪問看護ステーション「ユニネット・まちかど」の作業療法士である森奈奈さんがこの「れもんカフェ」の運営に携わるようになって、3年目になる。れもんカフェ立ち上げの時に1人の作業療法士が関わっていたが、様々なカフェへの参加要請が増えてきたことから、京都府作業療法士会に認知症支援の委員会を設立して組織的に派遣するようになったことがきっかけだ。森さんは作業療法士として「認知症カフェ」にかかわるようになって改めて気づかされたことがあるという。カフェをはじめて訪れようという人は、認知症の診断を受けるまでの苦悩をはじめ、診断から現在に至るまで、さまざまな思いを抱いている。症状を専門的に伝え、アドバイスをすることは、これまでの「しんどさ(つらさ)」に加えて、まだ頑張ることを押しつけかねない。それよりも、同じ病気を抱えて生きる仲間や支援者と出会い、街中の喫茶店と同じようにお茶を飲み語ることで、悩みを共有したり、「病気になっても、これだけのことができる」と「失う」ことよりも現在の「できること」に目を向けてもらえるようにすることが大切だ。だから森さんは、「認知症カフェ」の場では私服で参加し、専門職であることで相手に気を遣わせてしまうのではなく、身近に感じてもらえるように、専門的な用語を使わず、同じ生活者としての目線で伝えるようにコミュニケーションにも工夫をしているという。

 コミュニケーションする上では「専門職であることを強く意識させないようにしている」森さんだが、しかし同時に、作業療法士としての知識、経験を活かし「認知症カフェ」の運営に貢献しようとする意識も強く持っている。終了後のスタッフによるミーティングでは、ある参加者と話した時に会話が聞き取りにくかったこと、向かい合わせではなく、隣同士に座れば、もう少し深いコミュニケーションが取れたかもしれないと報告をした。このように、参加者の能力を考慮したコミュニケーションの取り方の工夫として、運営側と共有している。プログラムにも専門性を活かした提案を行う。この日初めて行われたのは、カフェが始まる前のちょっとした時間を利用して、レモンとオレンジの2種類のアロマの「香りあて」クイズ。嗅覚を刺激するという意味もあると同時に、参加者同士が香りをネタにして会話を弾ませることで、その後のコミュニケーションを円滑にする「ウォーミングアップ」の狙いもある。「環境を整える」ことで人の行動やその質をよくしようという発想は、作業療法士ならではだという。

 また、「れもんカフェ」には「れもねいだー」と呼ばれる一般のボランティアも参加するが、この「れもねいだー」のコーディネートにも、森さんの作業療法士としての視点が活かされている。「ボランティアというとどうしても“お世話する”意識が強く出てしまいがちです。一緒に学び、楽しむことも大切であること、これならボランティアを続けられそうだと感じてもらいたくて、はじめて参加するボランティアの方々のために、プレゼンテーションのスライドを作ったりもしました」。これも森さんの「環境を整える」工夫の一つだ。

 病院や施設など、医療・福祉の場では「患者」と「治療者・支援者」という関係性だが、「認知症カフェ」では「生活者」としての当事者に出会えることが大きい、と森さんは言う。「認知症の人と家族の方が、地域での生活の中でどこにつまずくのか、なにを悩んでいらっしゃるのか教えてもらえることは、作業療法士としてとても大きな財産になります」。森さんは、作業療法士として認知症カフェに関わることで、将来的には認知症の当事者やその家族が、安心して暮らすことができる地域になるよう、微力ながらお手伝いさせていただきたい、と言う。「以前、ある地域の方が『認知症にならないように、予防のために』と、れもんカフェに参加されたことがあったんです。それが活動をしていく中で『認知症になる前の準備として、カフェに通っている』とおっしゃるようになったんです。「生活」の視点から、認知症当事者とその家族、またそれを受け入れる地域のありかたを考えていくために、作業療法士の視点と経験が欠かせないものとなっていくのではないだろうか。

■施設情報
宇治市健康いきがい課
〒611-0021 京都府宇治市宇治琵琶33
電話:0774-22-3141

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