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平成21年度 課題研究助成制度採用課題

研究
種目
研究課題名 申請者(研究代表者) 所属 助成金額(円)

操作行動における動的触知覚能力の検証 
-神経障害における機能レベル評価と知覚学習による改善の検討-

玉垣 努 神奈川リハビリテーション病院 600,000
研究概要: 作業療法で治療を行う対象操作行動では、視覚のみならず体性感覚等の触覚が対象や四肢の空間的特徴を正確に知覚するために必要である。本研究では、近年の触覚研究における感覚麻痺のある上肢でも動的触知覚(dynamic touch)による対象特性知覚能力があるとする知見に基づき、日常活動の対象操作行動に関わる神経障害者の麻痺部位の動的触知覚能力に関する実験的な検証を行い、その機能レベルおよび動的触知覚に着目した評価・介入手法を導出する。
実施方法: [被験者]頸髄損傷者(CSCI)6名.健常者(normal)6名.
[装置および材料]標準刺激として,直径1cm,長さが異なる木製の棒(50,65,90cm),および可動自立式の壁面(H200cm×W90cm×D50cm)が用いられた.被験者の左側面のテーブル上には,200cm×20cm×20cmの報告面が設置された.報告面は,長さ200cmのレール上を垂直に設置された高さ10cm,幅10cmの平板が無段階に前後並進移動が可能であった.報告面の原点に回転中心軸(0xyz)を合わせた.0xyzから壁までの距離は,それぞれ、18,33,44cmに設定された.被験者から棒を視認できないよう,レールと並行に布製カーテンで遮断した.また,実験中,被験者はノイズが流れるヘッドホンを装着し,棒と壁が接触する際に生じる衝撃音をマスキングした.
[手続き]被験者は車いすに座った状態で,遮蔽された右手に固定された棒を振って,壁に当てる動作を繰り返しながら,棒の端から先端までの長さ,もしくは右肘の回転原点から壁までの距離を報告するよう教示された.知覚された棒の長さもしくは壁までの距離は,卓上の報告面を操作し報告させた.報告面の操作は被験者の指示に従い実験者が行った.棒の長さを報告するタスクと壁までの距離を報告するタスクの順序はランダマイズされ,各施行ごとにどちらかのタスクを意図して行うよう教示された.被験者の右肘は肘台に固定された.棒と右手は弾性包帯でしっかりと固定した.被験者は実験者からの合図とともに棒振り動作を開始した.棒の振り方については,振幅・周波数・方向いずれについても制限を与えず,肘および手首の二関節を用いて,自由に振ってよいことを伝えた.ただし,棒が壁面と接触しない動作が生じた場合,また,床面やカーテンに棒が接触した場合は,その試行をキャンセルした.報告面の調整に際しては,時間的制約を一切かけず十分な判断ができるまで試行を続けるよう教示した.実験に先立ち,実験者がサンプル棒を用いて棒を振り動作を披露し,報告面の調整方法や注意点等について説明を加えた.サンプル棒として,長さ45cm,直径1.5cmの棒が用いられた.被験者の実験の練習は行わなかった.実験中は,被験者に対し,一切フィードバックを与えなかった.
結果の概要: 解析が済んでいる部分について報告する.
 頸髄損傷者(SCI)群(n=5)と健常者(n=5)の知覚判断値の平均値(±SE)は,それぞれ51.5(±1.36)cm,47.3(±1.0)cmであった.棒の長さの知覚と壁までの距離の知覚の平均値は,頸髄損傷者群ではそれぞれ58.5(±2.2)cm,44.5(±1.3)cm,健常者ではそれぞれ55.4(±1.6)cm,39.2(±.8)cmであった.棒の長さの知覚の平均値は,実際の長さ50,65,90cmに対して,頸髄損傷者群ではそれぞれ47.9(±1.8)cm,51.3(±2.1)cm,55.4(±1.9)cm,健常者ではそれぞれ37.7(±.8)cm,45.4(±1.1)cm,58.8(±.9)cmであった.壁までの距離の知覚の平均値は,実際の距離18,33,44cmに対して,頸髄損傷者群ではそれぞれ46.2(±2.4)cm,52.3(±2.5)cm,56.1(±2.2)cm,健常者群ではそれぞれ44.5(±1.9)cm,47.5(±1.8)cm,50.0(±1.6)cmであった.
 被験者群×棒の長さ×壁までの距離×意図の多要因分散分析の結果,棒の長さ(F[2,62]=70.66),壁までの距離(F[2,62]=40.80),意図(F[1,31]=59.53)に主効果が認められたが,被験者群に主効果は認められなかった.(F[1,31]=1.15)
  また,被験者ごとに分けて,棒の長さ×壁までの距離×意図の多要因分散分析を行った結果,健常者群においては,棒の長さ(F[1,5]=56.68,p<.001),壁までの距離(F[2,10]=19.34,p<.001),意図(F[1,5]=56.68,p<.001)に主効果が認められた.一方,頸髄損傷者群においては,棒の長さ(F[2,8]=3.42,p<0.08),壁までの距離(F[2,8]=15.08,p<.005)に主効果が認められたが,意図(F[1,4]=4.08,p<.011)には主効果が認められなかった.
効果(成果): 臨床の現場では,完全麻痺と診断された患者であっても,自己の麻痺部位を正確に知覚し行為のなかで巧みに利用しているように見える場面が数多く観察されてきた.しかし,他の感覚モダリティからの代行や,身体図式(地図)といった認知系・記憶系からの相互作用も背景として考えられるために,麻痺部分の触知覚それ自体の存在を示すには妥当性を欠いていた.また,従来の感覚検査では麻痺部位の自己受容性の感覚に限定されていたため,麻痺部位を通した外界受容性の触知覚に関してはほとんど知見がなかった.本研究はその点を一歩進め,麻痺部位においても対象の触知覚が存在することを示した.
 一方で,健常者と頸髄損傷者を比較検討した場合,分散分析の結果から頸髄損傷では意図の制御に問題が生じていることが示唆された.比較的に健常に保存されている触知覚システムに対して意図をいかに協調させるかが神経・筋骨格系に障害を有する患者への有効な支援になると考えられる.具体的に言えば,訓練課題の構成方法としては,オブジェクトの単一の特性に焦点を当てた(例えば,複数の積み木のそれぞれの長さを知覚させる)タスクを行うよりは,オブジェクトの多様な特性を焦点化させる(例えば,一つの積み木の大きさ,重さ,形など多様な特性を知覚させる)タスクを設定するほうが効果的であると考えられる.

 

平成21年度課題研究助成制度
課題研究審査委員会
     委員長 石川 隆志(秋田大学)(兼倫理審査委員会委員長)
     委 員 浅井 憲義(北里大学)
     委 員 澤田 雄二(札幌医科大学)
     委 員 新宮 尚人(聖隷クリストファー大学)
     委 員 高畑 進一(大阪府立大学)
     委 員 平賀 昭信(柏崎地域こころアセンター)
     委 員 茂原 直子(大阪発達総合療育センター)
     委 員 村井 千賀(石川県立高松病院)
     委 員 吉川 法生(星城大学)

課題研究倫理審査委員会
     委 員 小林 正義(信州大学)
     委 員 加藤 朋子(埼玉県立大学)
     委 員 小林法一(首都大学東京)
     委 員 田口 修(日本福祉大学高浜専門学校)
     委 員 堀田 英樹(国立精神・神経センター武蔵病院)

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