Opera20号
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沈黙の力を生かす存在感のある黒子になる3 JAPANESE ASSOCIATION OF OCCUPATIONAL THERAPISTS中村●障害がある方に対し変化のきっかけを与えるのが、僕らの仕事かなと思います。自分でこうしたい。ああしたいというのが出てき始めたら50%は成功です。障害があると自分が、どうしたいのかも全くわからなくってしまうので…。一度「できること」を実際に体験していただいて、じゃあ、あれもできるかなと自分で思っていただけたら、そこはそこに寄り添って、どう実現していくかの方法論になってきます。若い作業療法士は、自分を変えられない。自分の枠の中だけで患者さんをその枠にはめようとします。全然、患者さんの思いと違うことをやっているのです。僕もかけ出しの頃、患者さんから「担当を変えてくれ」、「私の作業療法をしてください」と言われたことがありました。学校で習ったことをそのままやっていたのです。村上●宇宙物理学者の佐治春夫さんが「愛とは、究極的には、相手に寄り添うことだ」ということを言っていて、相手を変えようとしてはだめだ、自分が変わらないとだめだといっています。究極的には、僕は何もしないことだと思います。あれこれ手を差し延べようとすると、転ばぬ先の杖を作ってしまうからです。僕は、「ことば磨き塾」を全国でやっていますが、何もしないことがいいと思っています。先日もほとんどしゃべらない学生2人が、たまたまペアになって、互いにインタビューをするワークショップをしましたが、なかなか言葉が出てこないのです。けれども、「こういうふうに言ったらどうだ」とか、「こうした方がいいよ」とつい言ってしまいがちですが、そうすると、せっかくふくらみ始めた芽を摘み取ってしまうことになるので、ずっと黙っていました。するとしゃべらないとしょうがないからしゃべるんです。どれだけ待てるか、ということです。沈黙の力はものすごく大きいのです。臨床哲学者の鷲田清一さんが病院に行ったとき、ずっと壁を見ている精神病の患者さんがいたので、一緒に30分ぐらい壁に向かっていたら、患者さんが鷲田さんに「何をやって    いるんですか」と声をかけてきたというのです。素晴らしいでしょ。●僕なんかも30分ぐらい横で黙っていたら、向こうが気になって話しかけてきました。●アナウンサーって、話す仕事だと思われがちですが、実は聞く仕事なんです。若いころは、沈黙が怖いから、常に何かしゃべっていました。僕は、NHKの後半、11年間はラジオをずっとやっていました。ラジオこそしゃべらないと不安です。けれども沈黙が気にならなくなっていくんですよ。自然に間ができるのです。2011年3月11日に震災が起きて言葉をなくすことがいっぱいありました。「大変ですよね」とか、「気持ちはわかります」とか、わかったようなことが言える状況ではありませんでした。その時、最高で20秒ぐらい黙っていたことがあります。30日本作業療法士協会会長中村春基 Haruki Nakamura

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