Opera20号
5/16

ラジオの魅力とはして逃げてしまったのです。僕は、「シカたがないご主人ですね」と思わず言ったんです。そうしたら、彼女は、クスっと笑ったそうです。そのご主人は、あわてて一目散に逃げたものだから、足を捻挫したらしいのです。僕がまた「シカたのないご主人ですね」と言ったら、その彼女が9カ月ぶりに声をたてて笑ったというのです。「トンネルの中にいた私に笑うことを思い出させてくれた、このラジオをもっと聴きたいと思いました」とお便りが来たのです。そういうお便りが、次から次に来  リスナーからの反応のように患者さるのです。日々、お便りに向き合ううちに、一緒になって喜んだり、哀しんだり、自然にできるわけです。喜怒哀楽の怒はいらないな。喜哀楽の感情を少しずつというかみんなが分かち合えるのがラジオのいいところなので、そういうことを少しずつというか毎日毎日積み重ねていく中で、わざとらしくなく、それこそ「存在感がある黒子」としての役割が身についてきたのだと思います。●アナウンサーの場合リスナーから反応が来ます。僕らのような「先生、先生」と呼ばれる職業ではどちらかというと少ないのです。「こんなことを言ったら嫌われるんじゃないか」と思って、言ってもらえない。んの反応がもっともっと治療者に伝わっていけばいいと思います。ただ経験を積んでくると結構言ってもらえるようになります。言ってもいいんだと安心されるんでしょうね。●11年間ラジオのお仕事をやってこられた中で、初めの頃と変化がありましたか。●急激に何かある日突然変わったわけではなく、だんだんにですね。正直に言うとテレビからラジオの仕事に移るときに、「なんで僕がラジオをやらなくてはいけないのか」と思ったんです。テレビは認知度が高くて、ラジオは日が当たらないメディアかなと錯覚していたのです。ところが、ラジオこそ「感情が行き交うメディア」なんじゃないかと。やりながらはまっていったんです。人々の感情に寄り添うことで、結果的に僕自身も育てもらったんだと思います。自分磨きにもなったし、心磨きにもなった。「人の喜びを倍にする、哀しみを半分に減らす」ということは、実は、自分の喜びに寄り添ってもらったり、自分の哀しみを癒してもらったりすることでもあり、お互いに感情を通い合わすことが出来る、心の居場所があるのがラジオかなと思ったんです。患者さんがなかなか心を開かないと言われましたが、中村さんはどうやって「黒子」になっているんですか?●僕らはまずその人の立場にどうやって立とうかと考え、そのための努力をします。生活背景、環境等がわからなかったら、心情がわからないので、アルバムを持ってきていただいて、どんな生活をしていらしたか一緒に見たりすることもあります。その人を理解しないと、その人にどうやって作業療法をしていいのかがわからないからです。どうしてこの人は心を開いてくれないんだろうと思った時は、こちらが変わらないと何も変わりません。この人はどんなところに住んでいたのだろうかと、休日に患者さんが住んでいたところに行ってみて、どんな生活をしていたか想像する。「あそこの坂、かけっこしたんじゃない?」と話のきっかけにすることもあります。そうすると「そうなんですよ。小さい頃こういうことをしました」と話が広がってきます。●相手は、安心しますね。自分の若い頃のこと、幼い頃のことをこの人は知ってくれている、わかってくれている、と。●そういうことが自然にできるようになると患者さんが元気になります。信頼してくれると、何でも相談してくれるようになります。作業療法の時間、相談だけで終わることもよくあります。私たちは、この人をどうやって食事ができるようにしようか、調理ができるようにしようか、お母さんとしてどうやったら復帰できるか、自信を取り戻してくれるか、と考えていると、ご家族の好みや家族構成などに自然に興味がわいてくるんです。●実は僕、人見知りだったんです。5 JAPANESE ASSOCIATION OF OCCUPATIONAL THERAPISTSマイクは、傍らかそっと差し出すような感じで

元のページ  ../index.html#5

このブックを見る