オペラ18号
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結局は、人と人お客さんは、舞台のエネルギーにお金を払っているなら、(私、そういう感じじゃないし、ちょっと違うけど)、乗ってあげようかしら」と思ってもらうことが、肝心じゃないでしょうか。だから、僕も、弟子のことはずっと頭にあります。なんかあったとき、「あっ、これ、あいつに言ってやろう」「あっ、こういうふうに言えばわかってくれるかな」って。少なくとも師匠業をやっている者    す。それでは、うまくいかないのです。はそのはずです。みなさんも、患者さんのことが、ずっと頭のどこかにあるでしょ。それがとっても大切なことですし、ある意味では、それしかできないですよ。●作業療法で、「こういう人には、こういうことをしなさい」という枠組みがあって、ついその枠組みで患者さんをみてしまうことが多いので●いろんなパターンを教えてあげることは大事ですが、その人のことを考えないと……。ウチの流派は、名取りになると弟子を取ることができます。僕は、お弟子さんが名取りになると、「とにかく看板を出せ。弟子が来たら、一生懸命教えるんだ」と言います。すると「先生、私、まだ三味線のマスターもしていないのに、お弟子さんなんか取れません」なんて答えるもんですから、「マスターなんか一生できるわけないじゃないか、俺だってまだなのに」って(笑)。「でも、どう教えたらいいでしょう? ュアルありませんか?」。「弟子のほうがお前さんを選んで、習いに来ようと思っているんだ。選んでもらったんだから、一生懸命考えて、やるしかないだろう」って話になります。僕のところに来るお弟子さんも、鉄九郎を選んで来ているわけですから、僕のことが嫌いではないんです。「イメージとは違った」とは言われますが(笑)。●作業療法の場合は、逆に、患者さんは担当者を選べないんです。だから、リハビリテーションが辛くなると、「もうイヤ」「あんた、嫌い」と言われます。そこでなんとかしようとして、はじめて自分の技術が向上マニだけど、人間性が高くなかったらダメなのです。●鉄九郎さんは、これまでの長唄の枠を越えて幅広く活躍されていますが……。●僕たちの世界は、9割5分ぐらいが世襲です。でも、僕は、20歳からこの世界に入った新参者です。だからこそ、自分はここの家系じゃないう感覚を持ってやっています。本当は長唄の世界にどっぷり浸っていたかったんですが、いつの間にか表に出るようになっています。それを、「長唄を広めるため」とか、「多くのお弟子さんを育てるため」と言ったら、ちょっと違う感じがします。あくまでも「私の勝手」でございまして、間違ったことをやれば、長唄協会から叱られるという立場にいます。●やっぱり、習ったとおりスマートにやろうとするだけでは、相手には伝わらないのですね。●古典芸能だから、教科書で習った通りきれいに演奏することでお金をいただく、と考えている人はいっぱいいます。それは間違ってはいないします。作業療法士という国家資格に守られているだけでなく、そういう患者さんと接しながら、自分の技術をみがいていかないと「本物」になれないのです。●結局、人と人ですからね。僕らの世界では、「あの人、人間は良くなかったけど、芸はうまくて……」と、言ったりはしますけど、そんな人はいません。その人のことをそういうふうに思っている人間か、そういうふうに思っていない人間かの差があるというだけのことです。人が良くなかったらいい演奏なんかできません。やっぱり、ギスギスした人は、ギスギスした音しか出せないんです。それを「もうちょっと柔らかく弾くんだよ」と言ったって、伝わらないんです。でも、持っているギスギスを円くしてやると、不思議なほど三味線の音が良くなるんです。会社の人に言われても直らなかったことが、おこがましいけど、師弟関係があるからこそ直るんです。それと、僕らは合同演奏です。ひとりで弾いてだれかが唄うのではなく、2人とか3人で弾きます。だから、自分だけでなく、その三味線で気持ち良く唄ってもらい、一緒に連れて弾く人たちに「この人のためなら、がんばる」と、演奏してもらわなくはいけない。それには、三味線の技術だけではダメなんです。そのチームのトップを育てるわけですからけ、どひ、とだりれのよ芸りをも追こ求のす家るのの子もだ大とい事JAPANESE ASSOCIATION OF OCCUPATIONAL THERAPISTS 4

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