Opera19号
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滅的にやられてしまいました。海辺に原発を作るという発想そのものが間違っていたと思います。だから、大変な国土破損をしてしまいました。今になって気がついて、どうしようかという状況になっています。風景が美しく、人とのストレスがあまりない田舎に行って、作物を育てながらのんびり余生をすごすという、昔抱いていた夢が地域限定になってしまいました。東北に来たかった人がたくさんいたけれども、やっぱり南に行ってしまいます。この問題は、国のインテリジェン    うな感じです。スコッチウイスキースにからんできます。この国がどのぐらい賢いかということです。たとえばスコットランドは、森と川の国で、風景は美しく、日本の東北のよの産地ですから、あちこちの川のそばに蒸溜所があります。その川から取水しますから、行政は最初から川の水の品質を落としてはいけないという考え方でやっています。ですから、護岸工事をいっさいやっていませんし、コンクリートの橋を作らないのです。川から500メートル離れないと畑を作ってはいけないことにもなっています。農薬を流さないためです。そのように、国家も国民も全員で川を守っているのです。●椎名さんのエネルギーは、どこから来るのでしょうか?●読書が好きでしたから、本を読んで考えることが、子どものころの訓練でした。それから、本を読んで実物が見られるものなら見にいくというように、行動に入るのです。見にいくと、そこでまた何かを発見し、それを先人たちの知識がつまった本を読んで確かめてみる。これがどんどんスケールアップしていって、北極はどうなっている、南極はどうなっている、世界で一番暑いところはどうだ、寒いところはどうだ、湿ったところはどうだ、乾いたところはどうだ……。きりがないです。●日本の医療や福祉についてどう思われますか?●日本の医療は、素晴らしいと思います。ただ、問題に思うのは、精神医学です。日本で年間3万人が自殺している中に、かなりの率で精神を患った人がいます。たとえば、1200床あるような大きな病院で6割の統合失調症の人がいたとすると、その病院に入っている平均年数は、12年から14年、へたすると20年です。●日本の恥部です。精神科における入院期間は、世界中で平均して10数日で、日本は300日です。群を抜いています。精神疾患に対して病気としてみなくて収容的要素が強かったのです。今は、急性期にすぐに薬で抑えて治癒しますから、3カ月も入院する人は少なくなっています。先ほど自殺のお話をされましたけど、それまで8000人から1万人だったのが、バブルの崩壊から5年ほどで急に上がりだして、3万人を超えて、10年ほどそのままなのです。ところで、世界をまわられて認知症の方にお会いになられましたか?●僻地に行けば行くほど、認知症だけではなく、統合失調症まではいかないという人たちは集落の中に溶け込んで暮らしています。みんなで守ってあげるところがあるのです。日本も昔はそうでした。また、ヨーロッパなどを旅していて、市電に車椅子の人が乗ってくると、子どもも含めてみんなでごく普通に車椅子を持ち上げて、車椅子の人も笑って冗談をいっている光景を目にします。日本はまだ遅れていると切歯扼腕の思いです。日本では、「何番目のドアで」といちいち連絡をとって、駅員が台を置いてというように仰々しくなってしまうので、気楽に出られなくなります。●ここは、高齢化率57・7%で日本で2番目に高齢化率の高い集落です。また、3年前の洪水で大きな被害を受け、JR只見線の全線復旧の見通「誰も本気で復興にかかわっていない」JAPANESE ASSOCIATION OF OCCUPATIONAL THERAPISTS 6JR只見線の会津川口駅。洪水の時は、この道路まで水が押し寄せてきた。ここから只見駅までは、まだ代行バスを使わなければならない。

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