機関誌『日本作業療法士協会誌』

副会長就任のご挨拶

副会長 大庭 潤平

 副会長2期目となります。会員の皆様に副会長再任のご挨拶ができることをたいへん嬉しく思います。会員皆様の代表として、協会運営を誠心誠意、一生懸命に取り組んで参りますので、何卒よろしくお願いいたします。
 副会長1期目の就任の挨拶では、「私たちで作業療法の未来は明るくできる」とお伝えし、今でもその信念は変わりません。しかし、あれから2年が経ちますが、まだ十分な成果を実感できる状況にはなっておらず、道半ばです。第四次作業療法5ヵ年戦略(2023‐2027)は、今年3年目の中間時期となりました。現在は、これまでの事業を評価して、完遂すべきものは推進し、修正すべき点は修正し、効果的かつ効率的な事業を展開していきたいと考えています。そして、第五次作業療法5ヵ年戦略(2028‐2032)の計画を進めていきたいと思います。これまで同様に会員の皆様のご理解とご協力そしてご意見、都道府県作業療法士会との連携を進めて、成果を出していきたいと思います。さらに、その成果をもって、人々の健康と幸福に資する作業療法が、会員によって全国津々浦々で実施されることで、作業療法士の地位向上を成し遂げていきましょう。どうぞよろしくお願いいたします。
 本会は、基本理念「作業で暮らしに彩りを」を策定しました。この基本理念は、本会が常に自覚し、また立ち返るべき価値観、社会的使命、基本姿勢を示し、本会の組織運営、財務管理、事業管理、人事管理の最終意思決定を行う際の指針となるものです。ぜひ、基本理念の本文もご一読ください。そうすることで、私たち会員が共感と協働で社会貢献を行い、作業療法の普及、作業療法士の質の向上、作業療法士の地位向上を成し遂げていけると考えています。
 2年前よりも日本社会と国際社会はとても不安定で、先行きが不透明な状況です。しかし、作業療法士は、自らの潜在能力を見付けて、それを活かして、力強く生きる力を身に付ける知識と技術と思考をもっています。だからこそ、足元を照らし、進むべき道を切り拓いていくことができると思います。私たちは、作業療法の未来を明るく豊かなものにしていくことができる潜在能力をもっているということを皆様と共有できれば嬉しいです。
 私の副会長としての職務は「代表理事」、「法人の管理・運営に関すること」「作業療法の学術活動に関すること」「作業療法の国際交流に関すること」、「WFOT代表」となりましたので、その内容と所信をお伝えします。
 「代表理事」とは代表権をもつ理事のことで、会長と副会長がそれに当たります。会長を補佐する副会長の立場で協会の代表権をもち、さまざまな協会運営や渉外活動を円滑かつ効果的に行いたいと思います。そして、代表権の行使を適切に行うことで、作業療法士の地位向上と職務改善、協会の会員サービスの向上に資する活動を行います。
 「法人の管理・運営に関すること」とは、事務局を中心とした本会のすべての事業を管理し、運営することです。事務局が機動的に運営できる体制を管理・監督し、事務局員の労働環境を改善し、本会の抱える課題を解決し、事務局にかかわるすべての人と協働し、新しい意見を取り入れて、会員サービスの開発と提供を行います。
「作業療法の学術活動に関すること」とは、会員の学術活動や研究活動を推進し、学会、学術誌、課題研究助成制度等、さまざまな場と方法で作業療法の効果を検証し、科学的根拠に基づく質の高いサービスを提供することが目的です。作業療法の体系的な理解に資する活動にも取り組み、これからの作業療法を提案・発信していきます。
 「作業療法の国際交流に関すること」とは、本会の国際化と国際的な人材育成を推進し、国内はもとより国際社会への貢献を行うことです。世界中はもとより特にアジア地域の作業療法士協会と連携し、価値ある情報を発信していきます。
 「WFOT代表」とは、世界作業療法士連盟の日本代表として、国際的な作業療法の課題解決に協力することです。世界第2位の作業療法士数を有する日本として国際的な課題解決に協力すること、特に2026年のWFOT代表者会議と世界大会に出席し、日本作業療法士協会プレゼンス向上と国際交流の推進に取り組みます。
 以上の副会長の任務に限らず、一理事としても会員の皆様の意見に耳を傾け、作業療法と本会の発展のために全力を尽くしたいと思います。
 ぜひ、新たな執行部をご注目いただき、ご支援・応援のほどよろしくお願いいたします。そして、皆様にお会いできることがあれば、お気軽にお声がけいただければ幸いです。ともに課題と目標を共有し取り組んでいきましょう! よろしくお願いいたします。

 

副会長 竹中 佐江子

  この度、日本作業療法士協会の副会長を拝命し、身の引き締まる思いです。理事として3期目にあたり、このような大役を仰せつかり、これまで経験したことのない出来事や見たことのない景色が待ち受けていると感じております。しかしながら、現在そして今後、作業療法を取り巻くさまざまな課題に向き合い、解決を図っていくために、覚悟をもってこの任をお引き受けする決意をいたしました。会長をしっかりと補佐するとともに、会員の皆様の声に真摯に耳を傾け、誠心誠意取り組んで参る所存です。
 私は、これまで理事としての2期の間、教育部を担当し、卒前・卒後教育のあり方について検討を重ねて参りました。そのなかで、人材育成の仕組みと人々のつながりこそが、作業療法の発展に不可欠であると強く認識いたしました。人の可能性を最大限に引き出し、そのつながりを強固なものとすることが、これからの作業療法をさらに前進させる鍵となります。
 現在、わが国では少子高齢化の進行に伴い、社会保障制度の維持が大きな課題となっています。担い手不足や財源の確保は喫緊の課題であり、加えて、作業療法界においても学校養成施設の定員充足率の低下は、将来的な作業療法士の供給にも大きく影響を及ぼします。これらの課題に対して、本会役職者はもとより、作業療法士一人ひとりが真剣に取り組む必要があります。質の高い人材を輩出し、作業療法の専門性を社会に広く認知していただくこと。そして、社会保障を守りつつ、職域をさらに拡大していく取り組みを、一層充実・強化していくことが求められています。
 このような課題に立ち向かうためには、本会内において特に「教育」「制度対策」「学術」の3つの部署が、密接に連携しながら取り組む必要があります。具体的には、養成教育のあり方検討と生涯学修制度の推進、社会保障制度のなかで作業療法の活動領域を守るための制度対策、そして作業療法の成果を科学的根拠として示すための学術活動――こうした取り組みが1本の線でつながることが重要です。
 さらに、それらを支える役割として、「地域社会振興」の部署があります。地域の実践現場で起きていることにいち早く気付き、社会のなかで私たちの専門性をきちんと伝えていくことが、作業療法の持続的な成長を後押ししてくれると考えています。
 そして、こうした活動によって得られた成果は、内に留めず、積極的に外部へ発信していかなくてはなりません。そのためには、「政策活動」が不可欠です。国の法制度が整備されることで、作業療法士の実践の場はさらに広がり、作業療法士一人ひとりが安心してキャリアを築くことができます。職能団体として、政策に作業療法の視点を反映させていく活動は極めて重要です。この連携を強固なものとすることで、作業療法士としての存在感をより一層高めて参ります。
 作業療法は、先人たちの尽力によって築かれてきました。草創期の先輩方が、作業療法という新しい価値を日本に持ち込み、その専門性を確立してくださったからこそ、私たちは今、多くの場で人々の暮らしと健康にかかわることができています。
 その想いを受け継ぎながら、これからの作業療法士を育て、地域共生社会のなかで支援を必要とする一人でも多くの方に確実に届く体制を整えていけるよう、本会の組織づくりに尽力して参ります。
今後とも、皆様の温かいご支援とご協力を、どうぞよろしくお願い申し上げます。

副会長 谷川 真澄

この度、定時社員総会後の臨時理事会にて山本会長から指名を受け、理事会の承認により副会長を拝命いたしました。重要な役割に、責任の重さを感じておりますが、私に託されたこと、職責を全うできるよう、公明正大、真摯に努めて参ります。何卒よろしくお願い申し上げます。
 日本作業療法士協会(以下、本会)は、2023年の「基本理念」の策定から、根本的な組織強化に取り組んでいます。組織の中心にこの「基本理念」を据え、その周りに「組織運営」、「財務管理」、「人事管理」、「事業管理」の4つの機能を置いた組織モデルを2024年度の社員総会でも提示しました。さまざまな課題に関して、常に全体を俯瞰し、因果関係を見極め、優先順位をつけ、策を講じる。このような新たな組織マネジメントを視座に三役で取り組んでいければと考えています。
 4つの機能に分けて、本会の重要な課題を整理してみます。

【組織運営】
 定款に基づきながら、会議体系や重要案件の決定プロセスの見直しを図ること、広報戦略や作業療法の価値を高めるブランディング、渉外、政策活動等を進めていきます。組織運営はほかの3つの管理機能をコントロールし、法人の方向性を決める重要な方策となります。
【財務管理】
 入会者の減少、退会者の増加によって会員数が横ばい状態となっています。会費収入に応じて事業も拡大してきましたが、これからは必然的に収入と支出のバランス、収入に応じた事業の規模や集中と配分を図っていかねばなりません。基本理念と同時に策定された「財務管理指針」には、このような安定的で継続可能な財務のあり方が書かれています。2026年度事業計画では、この財務管理指針が本格的に導入にされることになります。
【人事管理】
 通常業務に加え、システム開発や他団体対応等、現在の事務局員数で適切に処理できる業務キャパシティを超える状況が長く続いているように感じます。人材不足でありながら必要な人材の確保は困難で、予算上安易に人を増やせません。このような状況は協会組織の運営全体に影響を及ぼします。今後は効果的な求人活動や、最適な業務管理の仕組みづくり等に三役、理事が取り組まなければなりません。
 また、人事管理は、事務局員と合わせて部員、委員として委嘱されている約600名の会員、会長以外の役員も含めて働き方や処遇の検討が必要だと感じます。
【事業管理】
 現状、作業療法士を取り巻く状況は非常に深刻です。社会保障費の抑制、30年間上がらない賃金水準、これらに相まって有資格者も12万人を超える時代になり、どうやって作業療法・作業療法士の価値を守り拡げていくのかが問われています。
 山本会長の公約「社会保障を守り、職域を拡大します」が端的に方針を示しています。今、地域支援事業への参画や就労支援、放課後等デイサービス、学校支援等、作業療法や作業療法士の位置付けが十分でないさまざまな領域にも専門性を活かして進出し、社会から評価を得ています。医療・介護保険の社会保障領域は堅守する一方で、こうした作業療法士の新たな活躍を本会は把握し、積極的に支援・推進し、職域拡大を図るべきではないでしょうか。医療も介護も新領域も「地域で活躍できる作業療法士」の育成の具現化、教育制度との整合が喫緊の課題と考えています。

 「最強の組織を築き、最も創造的な仕事を生み出すのは、組織内部で働く者同士の尊敬と共感だ」という言葉があります。作業療法の発展にかける想いは同じ、基本理念をもって心をひとつにして、会員各位、事務局員、理事、常務理事、三役が、それぞれの立ち位置で、それぞれを認めながら役割を果たしていけたら、素晴らしい結果が待っていると思います。会員の皆様、未来を拓くために一緒に進みましょう。