機関誌『日本作業療法士協会誌』

第59回日本作業療法学会 開催報告

第59回日本作業療法学会を振り返って

 学会の舞台は高松駅の至近、高松港から瀬戸内海を望むことのできる絶好のロケーションにありました。受付となったガレリアを抜けると、折しも半年前に完成したばかりのアリーナを通して、島々が点在する穏やかな瀬戸内海を一望できました。まずは、このような風光明媚な地で日本作業療法学会を開催できたことに、参加者および関係者を代表して心より感謝申し上げます。
 2025年11月7日の初日は、まさに小春日和と呼ぶにふさわしい快晴に恵まれ、受付には朝早くから長蛇の列ができていました。ポスター掲示を朝の時間帯にお願いしていたこともあり、列のなかには長い筒を手にした参加者も多く見受けられました。最終日は少雨に見舞われたものの、来場者数は当初の想定(2,500名)を大幅に超える3,200名超となり、大会は大いに賑わいを見せました。
 今大会では、これまでにないいくつかの新たな試みを盛り込みました。一つは、教育的要素を含む講演やセミナーを数多く配置したことです。過去のアンケート結果では、一般演題のみならず「研修を受けたい」「学びを深めたい」といった声が多かったこと、そして会員の知的資源を最大限に活用すれば、これほど多様なプログラムが提供できるということを示したかったためです。これらの教育プログラムを通じて、作業療法士の学術的発展を促すとともに、「学会参加によって知識を大きく更新できる」という会員メリットを改めて感じてもらうことを期待しました。さらに、一般演題についてはポスター発表を重視し、質疑応答が行いやすい環境づくりを図りました。昼と夕方に集中的なポスターセッション枠を設け、十分な時間とスペースを確保したのです。口述発表では質問や交流が難しい場面もありますが、ポスターセッションなら距離が縮まり、活発な議論が生まれることを、過去の学会から実感していたためです。
 とはいえ、懸念がなかったわけではありません。ポスターセッションを重視したことで口述発表が手薄にならないか、教育プログラムを増やしたことで参加者が分散しすぎないか、という点は危惧していました。しかし、結果的にはいずれも杞憂に終わりました。口述セッションは廊下まで人が溢れるほど盛況で、最終日の日曜日も各会場の活気は衰えていませんでした。また教育セミナーもいずれも満席に近く、たいへん好評でした。
本稿では、これらのプログラムを十分にご紹介する紙幅がないことが残念ですが、ここでは特に私自身が思いを込めて企画したシンポジウムと基調講演について触れておきます。
 シンポジウム「10年後の作業療法の透視図」では、中堅を担う3名のホープに、将来の展望と抱負を語っていただきました。作業療法士を取り巻く就業環境は、さまざまな面で明るいとは言い難い状況です。しかし3名のシンポジストは、それぞれの立場から「たとえ先細りに見える道であっても、あえて挑み続ける覚悟」を力強く示してくれたのが印象的でした。
 また基調講演の一つでは、旧知の仲である日本理学療法士協会長の斉藤秀之氏を招いて、「OT協会に期待すること」を率直に語っていただきました。本会に対して、連携の強化、役割の明確化、発信力の向上等、前向きな提言を数多く頂戴しました。とりわけ「峻別」というキーワードで作業療法士の役割を示された点には、氏の慧眼がうかがえました。 
 話題を冒頭の風景に戻します。高松市がある香川県は別名「うどん県」と自称するほど、うどんが有名です。それは今学会のロゴにも象徴させ、シンプルであるがゆえにその存在を強調するというロゴ本来の役割を大いに果たしてくれました。現地でそのあまりにも有名すぎるうどんを食べずに帰った方はさすがにいらっしゃらないと思われますが、目の前に見える女木島(鬼ヶ島)や男木島、果ては小豆島に船でぜひ渡ってみたかった、という参加者は私だけではなかったと思います。次回は新潟です。目の前には佐渡島が(運が良ければ)見えます。ぜひ高松で果たせなかったさまざまな思いを背負って、新潟にいらしてください(「なぜ新潟の人が高松で学会長を務めたのですか?」と多くの方々からたずねられましたが、それは協会が定めたルールですので、ご理解いただければ幸いです)。
 最後になりましたが、現地で参加してくださった皆様、オンラインで視聴してくださった皆様に改めて感謝を申し上げます。また、演題登録から閉会までにご不便を感じたり、不快な思いを抱かせてしまったりした点がございましたら、それらはすべて学会長である私の責任です。この場をお借りして、衷心よりお詫び申し上げます。
 開会式でもお伝えしましたように、この学会に参加された皆様の脳裏に、今回の学会で得た思い出が、感じたこと、出会ったこと、経験したこととして、あの高松港の赤灯台のように、いつまでも静かに赤く輝き続けることを願っております。

(第59回日本作業療法学会長 能登 真一)

能登真一学会長

会場の一つとなった「あなぶきアリーナ香川」

高松港の赤灯台

講演する日本理学療法協会長の斉藤秀之氏

今回のポスター会場全景

国際企画プログラムの様子

本会ブースでは初代会長の鈴木明子先生の功績を偲ぶコーナーを設置

参加者からあふれる学びへの熱意

 誰もが参加しやすい学会とするため、第59回日本作業療法学会(以下、本学会)もハイブリッド開催(現地&オンデマンド〈一部ライブ〉配信)といたしました。本学会は初めての香川開催ということもあり、参加者数はここ数年で最大となりました。参加スタイルとしては、現地参加が圧倒的に多く、オンデマンドのみの参加は減少傾向にありました。
 本学会は能登真一学会長を中心に、多くの新しい企画を設けました。主な企画は教育セミナーの充実、ポスター待機時間の工夫、アフタヌーンセミナーの設定であり、このほかにも細かい点まで丁寧に設定しました。教育セミナーは21講座に上り、最終日まで多くの方が参加されていました。皆様の「学びたい!」という熱意がひしひしと伝わってきました。ポスターについては、待機時間にはほかの講演や演題を設定しない工夫をしました。これにより、ポスター会場に「全員集合!」が可能となったのです。私も計4回の待機時間にポスター会場に行きましたが、広い会場が狭く感じるぐらいの参加者がいました。参加者同士の会話も多く、とても良い交流・討論の場になったと思います。アフタヌーンセミナーについても、予約開始時に満員となる盛況ぶりで、その必要性を感じた次第でございます。
 オンデマンド配信については、年末年始にゆっくりご覧になった方も多いのではないでしょうか。次年度も同様の配信期間とする予定ですので、ぜひ現地参加予定の方も見逃し配信としてご活用ください。
 そして、今回のテーマである「作業療法の価値を高めるエビデンスの創出」のとおり、本学会で作業療法の価値を高める方法について、何らかのヒントを見つけることができましたか。先に述べたように、多くの教育セミナーが設定されたため、複数のセミナーを聴講された方が多いのではないかと思います。しかし、聴きっぱなしでは自身の知識にはなりません。聴講した内容を復習し、実践していくことで、自身の知識になっていくと思います。そして、その知識をもとに、世の中に発信していただき、エビデンスを創出していただきたく思います。
 次回以降も、皆様のご支援をいただき、作業療法のエビデンス創出の一助になる学会になるように努めて参ります。引き続きのご協力のほど、よろしくお願いいたします。

(学術部 学会企画運営班班長 泉 良太)

会場内には讃岐うどんをはじめとした香川のグルメを味わえるブースも

企業展示スタンプラリーを実施する等、参加者は楽しみながら情報に触れることができた

現場力×研究力が磨かれる瞬間
高松で感じた作業療法の可能性

 香川県高松市で開催された第59回日本作業療法学会。その会期直後の11月10日、学会会場であったあなぶきアリーナ香川が「世界で最も美しいアリーナ2025」に選出されたという知らせがスマートフォンに届きました。私自身これまで多くの学会に参加してきましたが、これほどまでに海と街が調和する美しい建築は初めてで、現地でも強い感動を覚えました。高松という街の魅力に触れた参加者の皆さんも、例年以上に活気に満ちた議論、新たな出会い、旧交の温まり等、作業療法士ならではの人間味あふれる交流を深めておられたように思います。
 私自身は、東京湾岸リハビリテーション病院の作業療法科責任者として、本学会で初めて実施された「病院・施設説明ブース」に出展いたしました。多くの参加者、とりわけ学校養成施設の教員の皆様に当院の魅力を直接お伝えできたことは、巡り巡って全国の学生の皆さんに当院の存在を知っていただく機会につながると感じており、将来にわたり地域社会や対象者に良質な作業療法を届けるための大切な一歩になったと考えています。学会運営事務局ならびに来場者の皆様に心より御礼申し上げます。
 説明ブースはポスター会場内に併設され、周囲では全国の作業療法士が熱のこもった議論を交わし、新たな学びやつながりが生まれていました。特に今回のポスター会場の活気は、これまでの学会のなかでも随一であったと実感しています。その空気に触れ、改めて学会が私たちの「現場力」と「研究力」を高め、互いを鼓舞し合う場であることを強く再確認しました。血の通った対話が連鎖し、実践が磨かれていく。その中心には、作業療法士一人ひとりの情熱が確かに存在していました。さまざまな困難がある今の医療・介護・福祉の世界においても、私は「作業療法がもつさらなる可能性」に心躍っています。
 今年は記念すべき第60回日本作業療法学会(新潟)。全国の作業療法士の知恵と想いを結集し、これまで歴史をつくってきてくださった諸先輩方の作業療法を紡いで、誠実に、確実に、社会に真に役立つ作業療法の未来をともに創り、育んでいきましょう。次回の日本作業療法学会を心から楽しみにしています。

(東京湾岸リハビリテーション病院 熊谷 将志 )

第60回日本作業療法学会に向けて

 第59回日本作業療法学会は、サンポートホール高松およびあなぶきアリーナ香川で2025年11月7日~9日に開催されました。あなぶきアリーナは、「せとうちに新しい感動が生まれる」というコンセプトのもと、穏やかな瀬戸内の波間に浮かぶ島々を借景として、まさに2025年春生まれたばかりの会場でした。参加された皆様は、講演、口述発表、ポスター発表の合間に、建物と一体化したこの美しい風景に魅了されたのではないかと思います。うどん県と称されるほど香川の象徴である讃岐うどんについても、ポスターはじめ、会場にも設置され、「何杯も食べた」という声を多く聞きました。第7会場までありましたが、印象的だったのは、どの会場でも若い会員の方が積極的に学問への高い情熱をもって、そして発表者への尊敬の念を表して質問をされていた姿です。能登学会長が意図した「作業療法の価値を高めるエビデンス」が発表でも質問でも確実にかたちとなっていた学会だと思いました。
 第60回日本作業療法学会(2026年11月20日~22日)は、朱鷺メッセ新潟コンベンションセンターで開催いたします。テーマは、「脳機構から読み解く作業療法の挑戦―『作業』によってあなたも私も満たされる―」としました。「満たす」はReillyが述べた“occupy”の意味を含みます。作業療法士の学術団体なのですから、思う存分「作業」を語り合えたらと考えています。第60回という節目の学会では、これまでの学会の良いところを引き継ぎ、新しい知識も分かち合える学会となることを願っています。
 朱鷺メッセも高松同様、海に面した会場で、隣接したホテルの展望室からの風景は360度パノラマで、日本の夜景100選に選ばれているそうです。美しい景色と美味なる食べ物とともに新潟でお待ちしております。

(第60回日本作業療法学会長 種村 留美)

第60回日本作業療法学会長 種村 留美氏

第60回日本作業療法学会(新潟)のご案内

 2026年度の日本作業療法学会は新潟で開催されます。これまで同様に現地・オンデマンドのハイブリッド開催を予定しています。
【開催概要】
テーマ:脳機構から読み解く作業療法の挑戦─『作業』によってあなたも私も満たされる─
会 期:2026年11月20日(金)、21日(土)、22日(日)(日曜日午前で終了)
会 場:朱鷺メッセ 新潟コンベンションセンター
学会長:種村 留美(関西医科大学リハビリテーション学部)

 現在、演題募集中です。演題募集期間は2026年1月13日(火)正午~2月27日(金)23時まで。演題募集要項については、第60回日本作業療法学会(新潟)のホームページでご確認ください。

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