機関誌『日本作業療法士協会誌』

ICFに基づく疾患別作業療法アセスメントセットの開発 第1回 作業療法の標準化が求められる背景と標準化事業の概要

 本連載では、日本作業療法士協会が2025年度重点活動項目として掲げる「疾患別作業療法の評価及びプログラムのICFによる可視化と実践の推進」として取り組んでいる、ICF(国際生活機能分類)に基づいて疾患別作業療法標準化事業(以下、標準化事業)の概要を紹介します。
 第1回目の今回は総論として、この事業の概要についてご説明します。

作業療法の標準化が必要とされる背景

 「作業療法は何をする専門職なのかわかりにくい」「施設によって実施内容が大きく異なる」といった声を耳にする機会は少なくありません。作業療法には、作業に基づく実践という共通基盤がある一方で、疾患に起因する健康状態の問題や心身機能の障害にも対応する必要があります。このように、作業療法の共通基盤と疾患特異的な要素を統合して解釈し実践へ結びつける必要があるため、作業療法士個々人や施設によって実践内容にばらつきが生じやすいという課題が指摘されてきました。
 本会ではこれまで生活行為向上マネジメント(MTDLP)の開発・普及を通じて、作業療法プロセスの標準化を進めてきました。しかし、「作業療法がどのようなアセスメントを行い、どのような治療・指導・援助を提供しているのか」という実践内容そのものの標準化については、いまだ一貫した見解には至っていません。こうした状況は、国民や他職種から作業療法の理解を得にくくするだけでなく、大規模データベースを活用したエビデンス創出にも大きな制約となっています。

標準化事業の推進体制

 『作業療法ガイドライン2024年度版』1)では、アセスメントにICFの活用を推奨しており、WFOTも同様にICFの利用を支持しています2)。そのため、ICFに基づく標準化は、作業療法実践の可視化とエビデンス基盤の強化に不可欠と言えます。
 こうした背景を踏まえ、2023年度より学術部学術委員会内にICFデータ収集分析検討小委員会(委員長:村井千賀)と学術対策小委員会(委員長:塩田繁人)の2つの小委員会を設置し、精神科・認知症・脳血管疾患・運動器疾患・呼吸器疾患・循環器疾患・がんの7領域における作業療法の標準化に取り組んできました。2025年度からは両委員会を統合し、より一体的に標準化事業を推進しています(図参照)。

図 標準化事業の概要

事業の4つの柱

―作業療法を可視化し、疾患別エビデンスを創出する
 標準化事業では、以下の4つの取り組みを中心に活動を進めています。
 1.疾患別の作業療法評価(アセスメントセット・手引き)・介入内容の枠組みの作成
 2.全国規模の実態調査から開始し、介入研究まで発展
 3.作業療法のアウトカムを検証・明示
 4.関連学会と連携し、ステートメントとして発表
 次号からは、各疾患別作業療法アセスメントセットの構成と活用の手引きについて順次紹介します。標準化事業が、全国の作業療法実践の可視化とエビデンス創出に寄与することを期待しています。

【参考文献】
1)日本作業療法士協会:作業療法ガイドライン2024年度版.https://www.jaot.or.jp/files/page/gakujutsu/guideline/OT%20guideline_2024.pdf (閲覧2025/12/08) 
2)Birgit P, Susan D, Susan M, et al: The International Classification of Functioning, Disability and Health (ICF): Opportunities and challenges to the use of ICF for occupational therapy. WFOT Bulletin 71(2) 108-114, 2015.

(学術部 疾患別作業療法標準化事業班)