機関誌『日本作業療法士協会誌』

第12回 作業療法士のための組織マネジメント講座

●読者の方からのご相談

≪Q1≫
 病院に勤務しています。他職種と協働して(1)患者支援、(2)業務改善を進めていく機会が多くあります。その際、専門性の異なる職種間で課題を共有し、目標達成に向かうことに難渋し、改善に時間がかかっています。マネジメントするうえで、他職種とどう協働していくべきか、悩んでいます。
(匿名希望)
≪Q2≫
 若手スタッフはほかの施設や近くの同業者(作業療法士)とかかわりをあまりもつことがないため、交流の場をつくりたいのですが、飲み会を強制するわけにもいかず、ほかに良い方法がないか悩ましく思っています。何か良い連携の仕方等あればご教示ください。
 (匿名希望)

はじめに

 「連携」に関する相談を2ついただきました。同種の課題ですので、2つを併せて回答いたします。
 回答に入る前に2点確認しておきます。
 一つは、“患者の何を支援するのか”ということです。私たち作業療法士は、「本人が望む“したいこと(作業、暮らし)が実現できるよう”支援すること」と答えるでしょう。ほかの職種は、“患者の何を支援する”と答えるのでしょうか。「何を支援する≒各職種の主な役割」だとすれば、医師は「診断と治療」、看護師は「医師の診療補助、介護と健康管理」、介護職は「日常生活における身体介護」、薬剤師は「調剤と服薬指導」、管理栄養士は「栄養指導と食事管理」、理学療法士は「身体機能の改善」、言語聴覚士は「言語・音声機能、嚥下機能の改善」、社会福祉士(MSW)は「社会資源の活用や退院支援」でしょうか。
 これらの役割は、医師や看護師、薬剤師や管理栄養士等が担う「生命・健康の維持・管理」、理学療法士や言語聴覚士等が担う「機能の改善」、介護職や作業療法士等が担う「日常生活行為や社会適応力の改善・向上」、社会福祉士等が担う「社会的環境調整」の4層になると思います。まずはこのことを確認しておきます。
 もう一つは、“多職種が協働して支援する”ということについてです。職種ごとに、ものの見方や考え方、価値観や仕事の進め方等に違いがあります。上述したそれぞれの異なる役割や特性(職業柄)をもつ複数の専門職が協働して、患者が望むことをより効果的に達成しようとするためには、①「共通の達成目標」、②「協働して作業するための仕組み」、③「職種間をつなぐ働きかけ」が不可欠です。私たちは何のために他職種と連携して、そのために何をする必要があるのか、この基本的な考え方を押さえておいてください。

Q1(1)に対する回答 ―患者支援における有効な連携方法

 有効な連携方法を提供するためには、次の3つが機能していることが必要です。
 一つは、①「共通の達成目標」の設定です。目標とは、「本人の願い」に「専門職チームによる予後予測」を加味した「患者本人の決定による望み」だと言えます。たとえば、回復期リハビリテーション病棟に入院中の患者であれば、退院後に住みたい場所(入院前の自宅等)と暮らし方(健康の維持・管理方法、個々の日常生活行為の仕方〈BADL、IADL〉、社会的支援の活用方法)を、「共通の達成目標」として設定できているかどうかです。
 「患者本人と専門職チーム間の目標がバラバラ」「専門職間の目標がバラバラ」では、患者本人が満足する支援にはなりません。患者本人やチームメンバー全員に共通する達成目標を、設定(途中での変更も含め)できるか・できているかによって決まります(図参照)。
 次に、②「協働して作業するための仕組づくり」があるか・機能しているかです。医療保険であれば「リハビリテーション総合実施計画書」、介護保険であれば「ケアプラン(介護サービス計画書)」がこれにあたります。目標を達成するために本人や各専門職がなすべきこと(役割)を確認・記載したもの(定期的な検証と内容の変更含む)と言えます。
 最後に、③「職種間をつなぐ働きかけ」です。「リハビリテーション総合実施計画書」等で絵や設計図は描かれたとしても、実際に基礎をつくり、柱を立て、屋根を掛け、壁を塗り、電気や水道を通して人が住めるようにしなければ、絵に描いた餅で終わってしまいます。この一連の作業を進めるには、ここでは影のコーディネーターとでも呼べる現場監督が必要です。そして、この“影のコーディネーター役”、“つなぎ役”こそ、作業療法士が担うべきであると考えます。理由は、前述の「各職種の役割」において、1層の「生命・健康の維持・管理」と2層の「機能の改善」を基盤とし、4層の「社会的環境調整」を活用しつつ、3層の「日常生活行為や社会適応力の改善・向上」の実現へと繋いでいかないと、私達作業療法士の役割である「本人が望む“したいこと(作業、暮らし)が実現できるよう”支援すること」ということが果たせないからです。
 たとえば、退院後は独りで在宅での生活(入院前の生活の場)、排泄は「昼夜を問わず独りで歩いてトイレまで移動して行う」と目標を設定した場合、その目標を実現するために、医師には“リスク項目の列挙とリスク回避のための方法”を、看護師には“毎日の健康チェックの日常化” を、薬剤師には“服薬の日常化と服薬確認方法” を、管理栄養士には“高齢の男性でも栄養管理に適したレトルト食品やその調理の仕方等の指導”を、理学療法士には“トイレまで歩いて移動できる歩行機能の獲得” を、介護職には“病棟生活におけるトイレ排泄の習慣化”をお願いし、作業療法士はそれらの機能をつなぎ、まとめ上げ、「昼夜を問わず独りで歩いてトイレまで移動して行う」という排泄行為を安全に行えるよう支援・確認するのです。
 そのために作業工程に沿った必要項目を挙げ、本人の行為遂行力と作業環境(物理的環境&やり方の選定と指導)を調整し、実際の生活の場(病棟&自宅)での遂行力を確認し、退院後生活の場での日常生活行為の遂行状態の確認と調整、退院後の健康・身体機能・日常生活活動の維持・向上のための支援(案)の作成と提示をします。私たち作業療法士は、生活の場に行き、歩き回って、声をかけ、頭を下げてお願いしながら、“日常生活行為のつなぎ(初めから終わりまで)”と“職種間のつなぎ”に汗をかきましょう。

Q1(2)に対する回答―業務改善における多職種協働

 職種にはその職種ごとの価値観や考え方、仕事の進め方があります。指示のもとで間違いなく実施することを得意とする職種もあれば、総合判断・指示命令を得意とする職種、自分の技術力をもって患者を変化・改善させようとすることを得意とする職種、情報提供や関係機関との調整を得意とする職種、創造と柔軟性を得意とする職種と、それぞれに違いがあります。この職種ごとの特性を無理に変えるかたちでの「協働」は難しく、エネルギーを掛けただけのメリットを得ることができません。
 業務改善における多職種協働の方法は3つです。
 一つは、本連載の第4回(第158号〈2025年5月15日発行〉)と第9回(第163号〈2025年10月15日発行〉)で説明した「業務改善実行計画書」を基本とすることです。業務改善実行計画は、全員でA:何に取り組むのか、B:なぜ取り組むのか、C:いつまでに達成するのか、D:どのような状態にしようとするのかについて、共有することができます。加えてE:誰が、F:いつまでに、G:何を(小達成項目・目標)しなければいけないかが示されます。本来は、この業務改善実行計画に基づき担当者(職種)ごとに示された役割(E、F、G)を果たすために、担当者(職種)ごとに「業務改善実行計画書」を作成して取り組むのですが、実際には困難も伴うでしょう。そのために代替方法が必要です。それが二つ目の方法です。
 二つ目は、「業務改善実行計画書(案)」の提示と一緒に「作業手順書(案)」や「進めるにあたって必要なもの・こと(目で見てわかる手順書、簡単な書類、Q&A)」等、実施するにあたって必要なすべてのもの(案)を作成・提示し、話し合いで一部修正がありつつも「決定・承認を得る」ことです。「決定後は少なくとも6ヵ月間は実行する」こと、「見直しは6ヵ月後にする」こと、「わからない時は、いつでも聞いてほしい」ということを確認しつつ、取り組みを始めることです。つまり、作業療法士が事務局役を買って出て、多職種での協議による業務改善という流れは踏まえつつも、できるだけ速やかに実際の取り組みへと移ることができるよう、事前準備にエネルギーをかけます。
 三つ目は、取り組み中に声掛けをし、いろいろな質問や相談に耳を傾け、一緒に改善策を見つけるよう汗をかくことです。つまり、作業遂行における“つなぎ役”を担うことです。


Q2に対する回答 ―士会活動も活用できる

 リーダーとしてのあなたは、「若手スタッフに、ほかの施設や近くの同業者(作業療法士)と交流する場をつくってあげたい」、その理由は「ほかの施設や近くの同業者(作業療法士)と交流することでいろいろなことを学べるが、今の若手はあまりかかわりをもつことがないため機会を提供してあげたい」と考えているからだと思います。その思いは、すばらしいと思います。ではどのような方法で、どのような場を設け、どのように進めれば上手くいくのかということですが、これには2つの方法があります。
 一つの方法は、「交流することの重要性や、交流会を開催すること」を前面に出す方法です。この方法で行う場合は、まず当事者である若手スタッフに「現状をどう捉えているか」「交流することの必要性をどう考えているのか」「どのような機会を設ければ参加するか」等について聞いてみましょう。おそらく聞いてもすぐには答えないでしょうし、また必要性を認めても優先度・必要度は低いかもしれませんが……それでもまずは聞いてみないことには始まりません。そういう姿勢を示すだけでも、リーダーの思いが伝わることもあります。併せて中堅クラスのスタッフにも聞いてみてください。多分にいろいろなことを教えてくれると思います。開催することに賛同が得られたら、開催に向けて、若手にあなたの考えや目的を説明し、若手スタッフと一緒に話し合い、準備することです。自主的な作業は、より高い達成感を得つつ、交流するという目的も達成できるでしょう。
 二つ目は、交流会の開催目的(真の目的)を前面に出さない方法です。たとえば、士会活動(支部活動も含む)の1事業を行うことを前面に出し、企画・運営する役割を数ヵ所の職場の若手スタッフにお願いする等です。事業を進めることで、参加者同士で自然と交流が図られます。交流会を開催するとなると「面倒くさそう」と身構えてしまう若手スタッフもいると思います。そういうスタッフが多い場合には、業務範囲内とは言えないまでも、比較的パブリックな士会活動であればモチベーションを見出せることが期待できます。
 他方で士会活動よりも交流会のほうが好ましいという、逆の考え方のスタッフが多い場合ももちろん考えられますから、まずは個々のスタッフのキャラクターや職場の雰囲気、情勢をよく観察し把握して、いずれかの方法を取ってみてください。

おわりに

 これまで12回シリーズで連載をしてきました「作業療法士のための組織マネジメント講座」も、今回をもって“終了”となります。
 世の中が大きく変化する気配を感じます。これまでの業務遂行のかたちややり方のままでは、利用者や地域住民に満足してもらえる作業療法を提供することが難しくなるかもしれません。職場の存続が危うくなるような状態に陥る時も来るかもしれません。一緒に働いていた職員が去っていくかもしれません。変化には困難がつきものですが、それを乗り越えて一人でも多くの作業療法士の方々が、少しでもよい職場をつくっていこう、できるだけより良い作業療法を提供する職場にしていこう、地域住民に喜んでもらえる作業療法提供システムをつくっていこうという願いを心のなかに立てていただき、取り組んでいただければと願います。1年間、お世話になりました。

(日本作業療法士協会 倫理委員長・元竹田健康財団 介護福祉本部長 太田 睦美)

 1年間にわたる「作業療法士のための組織マネジメント講座」をご愛読いただき、ありがとうございました。連載はこれで一旦終了いたしますが、マネジメント上のお悩み、職場でのお悩みがございましたら、引き続き機関誌メールアドレスまでお送りください。

●制作広報室 機関誌メールアドレス kikanshi@jaot.or.jp

また、お勤めの職場をはじめ、ハラスメント等の倫理事案に当たるかもしれない問題にお悩みがありましたら、本会倫理委員会までご連絡ください。

●倫理委員会メールアドレス ot-rinri@jaot.or.jp