機関誌『日本作業療法士協会誌』

「多様な文化的背景をもつ外国人に対する作業療法ガイドライン」が完成 多様な文化背景に応え、すべての人に届く作業療法へ

 遡ること5年前の2021年、第四次作業療法5ヵ年戦略(地域共生社会5ヵ年戦略)を検討する段階で、国際部では地域共生社会5ヵ年戦略のスローガン「人々の活動・参加を支援し、地域共生社会の構築に寄与する作業療法」に応える事業として「外国人対象者に対する作業療法サービスに関するガイドラインを作成」を提案しました。

「多様な文化的背景をもつ外国人に対する作業療法ガイドライン」表紙
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遡ること5年前の2021年、第四次作業療法5ヵ年戦略(地域共生社会5ヵ年戦略)を検討する段階で、国際部では地域共生社会5ヵ年戦略のスローガン「人々の活動・参加を支援し、地域共生社会の構築に寄与する作業療法」に応える事業として「外国人対象者に対する作業療法サービスに関するガイドラインを作成」を提案しました。

 提案の背景には、日本で在留外国人や外国にルーツをもつ人の数が増加し、地域の暮らしや医療・福祉の現場において、さまざまな文化的背景をもつ人々とかかわる機会が急速に広がっていることがありました。作業療法の臨床場面においても、言語や文化、生活習慣、価値観の違いが、評価や支援のプロセスに影響を及ぼす場面が増えてきているのではないでしょうか。そのような現場では、「どのように文化的配慮を行えばよいのか」「本人の価値観を尊重しながら効果的な作業療法を行うにはどうしたらよいか」といった課題が多く、作業療法士が判断に迷うことも少なくありません。また、文化的背景によって支援の受け止め方や家族とのかかわり方も異なってきます。

会員に実施したアンケート結果 

 ガイドラインをより実態に即した内容とするため、2024年5月に会員・施設向けのアンケート調査を実施しました。アンケート結果の一部を抜粋してご紹介いたします(図1・図2)。

図1 会員向けアンケート結果(1,805件の回答)の抜粋

図2 施設担当者向けアンケート結果(459件の回答)の抜粋

 「その他」の自由記述では、「時間感覚の違い」等の文化や価値観の違いにかかわる内容が特に多く、次いで「細かいニュアンスが伝わりにくい」等のコミュニケーションにかかわる内容が挙げられました。また、相手の国と日本の医療事情の違いにかかわる内容として、「日本の制度を理解してもらうことが困難」等の声も聞かれました。

困った時の糸口として

 こうした状況を受け、作業療法士が安心して、かつ質の高い支援を提供できるようにするため、多様な文化的背景をもつ外国人に対する作業療法の視点や配慮事項のポイントをまとめたガイドラインを作成する運びとなりました。このガイドラインは、文化の違いを障壁とするのではなく、個人の背景として尊重し、WFOTのビジョン「すべての人に届く作業療法」を実現するための大切な一歩となります。
 本ガイドラインは作業療法の専門的な知識や技術に関する医療ガイドラインとは異なり、多様な文化的背景をもつ外国人対象者に接するにあたって作業療法士が配慮すべき文化的・言語的・社会的な背景についてのポイントを紹介するものであり、異文化への理解と対応に重点を置いた内容としています。参考となるWebサイト情報も掲載しておりますので、必要となる対応について準備検討する際や困った時の糸口としてご活用いただき、会員の皆様が戸惑いや不安を抱くことなく多様性に配慮した作業療法を提供する一助となれば幸いです。
 ガイドラインは本会会員限定で公開しており、会員ポータルサイトの「ライブラリ」からダウンロードいただけます。また、都道府県作業療法士会事務局には各1冊送付予定です。

タイトルや用語の検討

 ガイドライン作成チームでは、タイトルおよび「外国人」という言葉の扱いについて慎重に検討しました。近年の社会情勢を踏まえると、「外国人」という言葉には区別的・批判的な印象が伴うことがあります。また、本会が推進する「誰もが主役 多様な協会へ」や、国際部が掲げる「国際的作業療法士の育成」という方向性にも配慮しました。そのため、本ガイドラインは外国人患者(対象者)を特別な存在として扱うのではなく、多様な文化的背景をもつ人への配慮に役立つヒントをまとめた資料となるよう工夫しています。

●こぼれ話
 WFOTは“外国人(foreigners)”は排他的なニュアンスを含むことから、より包括的な“international”の使用を推奨しています。私たちは日常のなにげない会話で“foreigners”を使いがちですが、文脈に応じて“international patients”や“international applicants”等、適切な語を検討・使用する必要があります。

フィードバックをお待ちしています

 本ガイドラインは今後の活用を通じて継続的に見直しと改善を重ねていく予定です。ご覧いただき、ご活用されたうえで、皆様からの感想をお待ちしています。
 また、2026年度は、本ガイドラインの理解と実践をさらに深めることを目的として、事例集の作成ならびにガイドラインの内容に沿ったワークショップの開催を検討しています。事例集に掲載するケースや、ワークショップで取り上げるテーマの検討にあたり、皆様からの日々の実践から得られた貴重なご経験を本会国際部と共有いただければ幸いです。たとえば、ご自身の施設で「このような文化的配慮を必要とした利用者がいました」「このようなアプローチ・支援が特に効果的でした」等、成功事例だけでなく、課題を感じた経験や検討中の取り組み等の情報もたいへん貴重です。ぜひお気軽にご意見・ご感想をお寄せください。

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