はたらくことは、いきること

重度心身障害と発達障害、それぞれの「暮らし」を見つめる

はたらくことはいきること

発達障害

子ども

国際医療福祉リハビリテーションセンター なす療育園 リハビリテーション科 梅原幸子さんと、2人の入所者・通所者。

重度心身障害と発達障害、それぞれの「暮らし」を見つめる

 国際医療福祉リハビリテーションセンター なす療育園は、重度の知的障害と重度の肢体不自由が重なっている児童の健康管理を行い、またその成長や発達を支援する医療型障害児入所/療養介護施設だ。リハビリテーション科に勤務する作業療法士・梅原幸子さんは、重度心身障害の入所者、および発達障害のある児童の外来を担当している。

 重度の心身障害がある人の多くはベッドの上で寝たきりで過ごしている。また、会話はもちろん、自分の意思を表現することが難しい人も多く、家族を含めた周囲の人とのコミュニケーションに課題を抱える。梅原さんが担当する入所者の中で、一番障害が重いのは、20代後半の方だそう。「その方は、在宅介護期間が長かったんですが、8年くらい前に入所されました。親御さんだけでは介護が難しくなったことがきっかけです。高齢に加え、お子さん以外のご家族で、介護が必要になった方がいらっしゃったそうです」。入所に際しては、これまでの暮らしの様子を家族からお聞きし、できるだけ自宅の環境に近づけるようにしたという。「小さいころの様子や、自宅の環境を聞いて、特にベッドまわりはなるべく自宅に近い環境にしました」。歌謡曲をよく流していた、と聞いて、ラジカセを持ち込み、音楽を流すようにした。また、光に対する反応がいいことが次第にわかってきた。「ミラーボールやディスコライトを使うと、目を大きく見開いたりするんです」。そこで、病棟での暮らしや作業療法で、光の刺激を取り入れるようにした。体を動かすことができず、一日ベッドで過ごしているため、当初はどうしても日中寝てしまうことが多かったという。でも音や光の刺激がある環境を整備することで、起きていられる時間が長くなった。

 重度心身障害者に対する作業療法について、梅原さんに聞いた。「主には『感覚刺激』を通じて、その方の反応を見ていきます」。光や音、匂いなど、どの刺激に応答があるのか。また、その刺激が好きなのか、嫌いなのか。好きな刺激が与えられた時は、笑ったりもするという。「笑ってくれると分かりやすいんですけど、それだけではなくて、たとえば、普段は動かさない体の部位を動かしてくれたり、呼吸や心拍が速くなったりすることもあります」。刺激に対する反応を引き出すだけではなく、そこから日々の暮らしをどう変えていけるかを考えることも、作業療法士の大切な仕事だ。光に対する反応がいい方であれば、毎朝カーテンを開ける、部屋の電灯のスイッチをこまめに入れる、ミラーボールなど光を発するおもちゃで遊ぶなど、反応をより引き出すことができるように、介護士などと一緒に、日々の過ごし方を工夫する。「彼らにとって、退所することは目的にはなりません。基本的には、彼らは生涯を施設の中で過ごすことになります。ですから、いかに施設の中での生活をよくできるのか。それが私たちの関わる意味です」。身体機能の維持・向上はもちろんのこと、暮らしの中で本人が楽しめることはなにか、そしてその暮らしを長く送るためにはどうしたらいいのかを考えることが、作業療法士の役割だ。

重度心身障害と発達障害、それぞれの「暮らし」を見つめる

 一方、なす療育園の外来には、発達障害のある児童が多く通っている。梅原さんが最近担当した児童は、小学校の入学準備のため、なす療育園に通いはじめた。「それまでも、言語聴覚士などによるリハビリテーションは受けていたそうです。ただ、私が最初にその子を見たとき、体の動かし方に不器用さ(ぎこちなさや不自然さ)がかなりあるな、という印象を受けました」。本人、保護者とも話をしたが、保育園での体を使った遊びや運動、あるいは鉛筆を使った課題に、かなりの苦手意識を持っていることがわかった。「周囲と自分とを比べてしまって、自信をなくしてしまい、自己肯定感を失ってしまう子どもは多いんです」と梅原さん。具体的な生活動作の改善を行う前に、遊具などを使って「体を動かすこと」の楽しさを伝える工夫をしたという。「そうやって何度か遊びの中で体を動かしてもらうと、その子は実は体を動かすことが大好きだ、ということがわかってきたんです」。運動への苦手意識を取り除きながら、次第に細かい手作業や身の回りの生活動作が上達していった。半年の間、月に1~2回ほどの外来を続けるうちに不器用さは少しずつ改善され、小学校の特別支援学級に通う今では、学校生活に不自由さを感じることなく過ごせるようになっているという。

 重度心身障害者の、毎日の「暮らし」を支えること。あるいは、発達障害のある児童の、これからの「暮らし」を支援すること。アプローチは異なるが、それぞれの生活をよりよいものにするために彼らと向き合う、作業療法士の姿勢は共通している。

■施設情報
国際医療福祉リハビリテーションセンター なす療育園
〒324-0011 栃木県大田原市北金丸2600-7 国際医療福祉大学内
電話:0287-20-5100(代表)