作業療法士Q&A

退院後在宅復帰時の環境整備における作業療法士の役割、連携のポイントとは?

作業療法士Q&A

生活環境

ケアマネジャー(介護支援専門員)です。退院に合わせて自宅環境を整備する際に、より専門的な見地からの意見がほしいと思い、担当の作業療法士から情報を提供してもらうことを考えております。一般的に、作業療法士による環境整備に関するアドバイスは、どのように行われるのでしょうか。どの時点で作業療法士のアドバイスを受けるのが適切かなど、気をつけるべきポイントについても教えてください。

退院後在宅復帰時の環境整備における作業療法士の役割、連携のポイントとは?

Q.

 ケアマネジャー(介護支援専門員)です。退院に合わせて自宅環境を整備する際に、より専門的な見地からの意見がほしいと思い、担当の作業療法士から情報を提供してもらうことを考えております。一般的に、作業療法士による環境整備に関するアドバイスは、どのように行われるのでしょうか。どの時点で作業療法士のアドバイスを受けるのが適切かなど、気をつけるべきポイントについても教えてください。

A.

 自宅環境の整備に、作業療法士の視点を入れることは、ご本人の自宅での暮らしを考える上でとても大切です。ここでは、いくつかの項目にわけて、自宅環境の整備に、作業療法士が効果的に関与するために気をつけている点をご紹介します。

①環境整備の目的・意味  退院・退所後の環境整備は、ご本人・介護者の能力に応じた自立的な在宅生活を継続させるために実施します。ここでいう環境整備とは単に住宅改修を指すのではなく、人的支援や福祉用具活用なども含めて、周囲の環境をご本人にとって最適なものにするために行う調整のことです。

②環境整備における作業療法士の役割  作業療法士はご本人の入院・入所中から、退院・退所後の環境での日常生活活動(ADL)を見据え、専門的な評価に基づき、健康状態・心身機能に応じたADL訓練(動作指導、福祉用具の紹介や使用方法指導)を行っています。可能な限りご自宅各所の写真や図面も訓練の参考にさせていただきます。また、介護者の方には適宜、自立を支援するための介助方法・動作指導を行います。

③環境整備について話し合う機会  在宅の環境整備には入院・入所施設内の職種間連携に基づいた総合的な判断が必要です。具体的な整備内容が話し合われる機会は病棟・施設内カンファレンスです。回復期リハビリテーション病棟では「退院前訪問指導」として、作業療法士等が退院前にご自宅を訪問させていただく時もあります。可能であれば、ケアマネジャー(介護支援専門員)は、そのタイミングで参加し、作業療法士と話し合っていただくのが良いでしょう。詳しくは入院・入所施設にお問い合わせください。

④話し合いで重要な点  話し合いで得た情報をもとにケアプランを作成するために、重要と思える確認事項を挙げます。

■疾患  急性進行性疾患(筋萎縮性側索硬化症、末期癌など)では、進行を見込んだプランとし、生活障害に迅速に対応していただく必要があります。急性発症(脳卒中、脊髄損傷など)の場合、退院・退所後の数か月間は生活再構築の時期で、生活上の課題が明らかになるとともに、心身機能や介護環境は変化していきます。これらに柔軟に対応できるよう、在宅復帰当初は福祉用具の貸与や人的サービスを活用し、住宅改修は必要最低限とします。その後の実生活の中で具体的な問題解決を図っていく際は、訪問リハビリテーションや通所リハビリテーションの作業療法士などにご相談いただけると良いでしょう。

■ADLごとの自立度  特に部分的な介助を要する場合、心身機能を十分に活用できるプランとし、廃用症候群(寝たきりなど体を動かさない状態が長期に渡って続くことにより、心身の機能が著しく低下すること)を予防する必要があります。特に気をつけるべきポイントを下に記しました。

○屋内移動:病棟・フロア内と、訓練場面(作業療法・理学療法などのリハビリテーションの場面)とで移動様式(移動の仕方)が異なる場合があります。生活上は前者(病棟・フロア内)の移動様式が実用的な場合が多いと思います。また体調の変化や耐久性の面、あるいはデイサービスの送迎時といった対外的要因から、同じ場面でも時間帯、緊急性により実用的な移動方法が異なる場合があります。排泄時、入浴時などの場面ごとに想定される移動様式を確認してください。その際、病棟・フロア内は上履きをはいていても、在宅では裸足やスリッパ履きになる場合がありますので、安全性に関して十分確認してください。

○排泄:オムツ、集尿器、ポータブルトイレ、トイレなど形態が様々です。昼間はトイレを自立で使用し、夜はベッドサイドのポータブルトイレを介助で利用するなど、時間帯により形態が異なる場合もあります。特に入院中と異なる形態になる場合には、住環境の十分な確認が必要です。

○入浴:浴槽への移乗などは大きな動作が要求され、多くの工程を経る活動でもあり、在宅では動作負担や介助負担が大きくなる場合があります。脱衣場所への移動、脱衣、洗い場への移動、洗体洗髪時の姿勢保持、浴槽への移乗(立って跨ぐ、座って跨ぐ、リフト利用など)、浴槽内での立ち座りといった工程ごとに区切って、それぞれ必要な住環境などの物理的整備、ケアに必要な体制などの人的整備を相談してください。在宅での継続が難しいと予想される場合は、デイサービスなどの活用も検討してください。

○屋外移動:自宅周辺の散歩、近所への買物、通院など、課題により移動方法が異なる場合があります。課題を確認の上、玄関から公道までの移動支援用具、住環境整備、介護者の手当てなどを検討してください。

○禁忌:骨折治療後で足への荷重に制限があるなど、福祉用具の選定・使用に不可欠な情報です。

⑤その他  介護保険以外に、自治体ごとに各種支援制度がある場合があります。それらの社会資源もご活用ください。

■回答
横浜市総合リハビリテーションセンター 粂田哲人

 

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