こんなところで!作業療法士

自助具づくりを知識と技能で支援する作業療法士

こんなところで作業療法士

福祉用具

一般社団法人京都府作業療法士会 自助具専門アドバイザーOTチーム・松井善也さん
 高齢・障害などで体に不自由がある人の生活の自立を支援する一つの手段として「自助具」がある。京都でボランティアが取り組んでいる自助具づくりを、専門の知識と技能で支える作業療法士に話を聞いた。

車いす用ドリンクホルダーの製作場面

車いす用ドリンクホルダーの製作場面

 京都で活動をする「京 自助具館」は、自助具の製作・開発に取り組むボランティアグループだ。高齢者や障害者など、体に不自由がある人の日常生活を補助する道具が「自助具」だが、その製作をボランティアベースで行っている。「自助具を作ってほしい」依頼を受けると、その依頼に応じてボランティアメンバーが材料費だけで自助具を製作する。2003年から活動をしており、ボランティアメンバーの方々がものづくりの技術を生かして製作を行ってきたが、2012年4月、京都府作業療法士会に「自助具に専門的な知識を持った作業療法士に支援してほしい」と依頼があり、それ以来京都府作業療法士会では京 自助具館の活動を支援している。

 具体的には、毎月4回ある「京 自助具館」の活動日に、参加可能な作業療法士が1名参加し、ボランティアメンバーにアドバイスをしたり、また相談をして意見交換したりする。この活動にかかわる作業療法士は8名、ちなみにそのうち4名は子育て中の母親で、活動中は「京 自助具館」の横にある託児室に子どもを預けながら参加している。参加した作業療法士は、専門的な知識や技能で「自助具を作ってほしい」と相談してきた当事者や介護者などの要望、あるいは日常生活活動の状況などをヒアリングし、情報収集および身体機能の評価などを行う。その情報を基に、相談者にとっての最適な自助具について、製作担当のボランティアスタッフに相談したりアドバイスを行ったりする。「最適な自助具について、相談者(ご本人さんや介護者など)と製作担当のボランティアスタッフの橋渡しをする役目です」と話すのは、京都府作業療法士会で本事業を担当している松井善也さんだ。

 「自助具に一番大切なことは『その人にとって最適な自助具とはなにか』を考えることです」と松井さん。自助具は自らを助ける道具であり、うまく提供できればその人の生活の質が改善される可能性がある。しかし、逆効果となる場合もあるのだという。「相談に来る人は、生活で何かしら不自由を感じておられるのですが、価値観・身体機能・生活状況など十人十色です。更に、既製品の自助具に適応しない人もいらっしゃいます。ですので、製作担当のボランティアスタッフとスクラムを組んで、オンリーワンの最適な自助具を目指し、出来るだけ多くの情報を収集し、要望に耳を傾けるように心がけています」。

 ボランティアメンバーは、退職後の60代以上が7割くらいで、残りが現役世代。最近は現役世代のボランティアや、学生など若い世代が増えてきているという。参加の動機は様々だが、多いものとしては、「もの作りが好きだ」、「自身や身近に病気や障害のある人がいたので関心があった」、「仕事が障害者や介護に関係したものだった」というものがあげられるという。

 「自助具は、主体的な活動の獲得を援助する道具であり、その製作と対象者に適応するように工夫することは、作業療法士の重要な技術の一つです。さらに個々のニーズに応じてその人らしい自助具をオーダーメイドすることで、対象者の生活をより豊かにすることが出来る可能性を秘めています」と松井さん。作業療法士としての「専門知識」と、ボランティアが培ってきたものづくりの「技術と経験」が連携を深めることで、対象者の主体的な活動の獲得を援助し生活の質の改善を図れる可能性が広がるという。「今後は、京都でのこの取り組みをモデルケースとして、こうした動きが各地域へと広がっていけばと期待しています」(松井さん)。

京都府作業療法士会 自助具専門アドバイザーOTチーム・松井善也さん

■施設情報
一般社団法人京都府作業療法士会
〒604-8855 京都市下京区梅小路石橋町5アヴニールK105
電話:075-754-6601