私のスタートライン

美容学校卒業後、憧れの作業療法士を目指す

私のスタートライン

東京天使病院・岩崎純平さん
 東京都八王子市の東京天使病院に勤務する作業療法士、岩崎純平さんは、美容学校で理容師の資格取得の勉強中にリハビリテーション職に出会い、作業療法士を目指すことにした。

東京天使病院・岩崎純平さん

 高校を卒業し、美容専門学校で学んでいましたが、在学中にバスケットボールで、ひざに手術が必要なほどの大けがを負ってしまいました。入院中にリハビリテーション職に触れ「誰かの役に立つ、なんてかっこいい仕事なんだろう」と憧れをもちました。たまたま通っていた美容専門学校は福祉にも理解のある学校で、ヘルパー2級を取得できる講座を開設していましたので、退院後、少しでも福祉に関わることをしたいと受講したのですが、講師に来てくださったのが、今勤務している東京天使病院のリハビリテーション科長さんだったんです。講義のあと、自分から話しかけると「一度見学に来ないか」とおっしゃってくださいました。見学に行き、そこでリハビリテーション職には作業療法士、理学療法士、言語聴覚士など異なる職種があること、それぞれの職能の違いなどについて初めて知りました。

こうした経験を通じて、僕のなかで「どうしてもリハビリテーション職に就きたい」という思いが強くなってきて、先ほどのリハビリテーション科長に相談したんです。すると「うちでアルバイトをしながら学んだらいい」と、とてもありがたいお話をいただきました。美容学校を卒業してから、日中は東京天使病院で働き、夜間は専門学校で作業療法士の勉強という、「二足のわらじ」生活をすることで、親に負担をかけずに憧れの職業を目指すことにしました。リハビリテーション職のなかでも作業療法士を選んだのは「人に関わる」ところに魅力を感じたからです。

 「働きながら学ぶ」生活はとても大変でした。始めたばかりのころは、それこそ「歩きながら寝てしまい、電柱にぶつかる」なんて、マンガみたいなことも時々ありましたね(笑)。それでも、作業療法士として必要な知識を学校で学びながら、同時に、アルバイトの立場とはいえリハビリテーションの現場を見られたことは、自分にとって大きな財産です。知識が増えていくにしたがって、アルバイトの仕事の時に見えてくる風景が変わってくるというか、それまで見えていなかったものが見えてくるような感覚がありました。

 「人に関わる」ことがしたいと選んだ作業療法士ですが、実際は何をすべきなのか、いくら学校で知識を重ねても実際には自分のなかで理解できていないのではないかと不安がありました。多少なりとも自分のなかで理解をしたという実感をもつことができたのは、臨床実習での経験が大きいです。患者の思いを受け止め、本当に望んでいることはなんなのかをつかもうと、作業療法の時間以外にも話を聞いたり、なるべく一緒の時間を過ごすように心がけました。学生だからできた「ぜいたく」なことなのかもしれません。4年生の臨床実習では脳血管障害で片麻痺のある女性を担当させていただいたのですが、料理がプロ並みの腕前で、夫や家族に食べてもらうことが生きがいという方でした。リハビリテーションの目標を「家で料理ができるようになること」と決めて、最終的には作業療法の時間に家族に来てもらい、作った料理を食べてもらったりもしました。家族みんなが「おいしい」と言って食べる姿を見て、患者が自信を取り戻す様子がわかりました。それからは、単に「動けるようにする」のではなく「その人らしさを取り戻す」ための支援をすることが、作業療法士のすべきことなのだ、と思うようになりました。

 卒業後は、お世話になった東京天使病院に恩返しをしたいという気持ちもあって、迷いなく今の職場を選びました。担当している患者の数は多く、時間に追われる生活です。実習のようにじっくりと時間をとることはできませんが、その時の気持ちを常に、もち続け、リハビリテーションを通じて「その人らしさ」を探し、それを取り戻すお手伝いをすることを心がけています。

美容学校卒業後、憧れの作業療法士を目指す

■施設情報
医療法人社団玉栄会 東京天使病院
〒193-0811 東京都八王子市上壱分方町50-1
電話:042-651-5331(代表)