認知症の方への作業療法


認知症は、脳の神経や血流に異常が起り脳の機能障害がすすむ病気です。具体的には「前のことが思い出せない」、「新しいことが覚えられない」、「人や時間、場所を正しく認識できなくなる」、「料理ができない、お金の管理ができない」など、それまでは当たり前にできていたことが少しずつできなくなり、生活のなかで「困りごと」が増えていきます。しかし、一度に全ての能力が失われるわけではありません。

認知症の方が、住み慣れたご自宅で生活を続けていくには、さまざまな支援が必要です。そうした支援は、医師、看護師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、管理栄養士、などの医療系の職種と、保健師、社会福祉士、ケアマネジャー(介護支援専門員)、介護福祉士、ヘルパー(介護職員初任者研修および介護職員実務者研修修了者)、などの多くの職種が協力して行っています。

作業療法士は、認知症を支援するチームの一員として自らの強みを生かすことで貢献していきたいと考えています。

作業療法士の強みは、認知症という病気だけでなく、認知症の方の個性やその人らしさ、そして、認知症の方を取り巻く環境も考慮したうえで、認知症の方をサポートできることです。認知症の方の「できること」に注目し、その力を最大限に引き出すことを大切にし、その方が、住み慣れた地域で暮らしていけるよう、生活のなかの「困りごと」を少しでも解決することを目指して支援しています。

そして、認知症の方と、その家族をはじめとした周囲の人々の絆をつなげ続けるお手伝いも、私たちの務めだと考えています。

動画「二本の傘」について詳しくはこちら

認知症の方への作業療法とは

2015年1月に策定された「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」において、認知症の人に対するリハビリテーションは、「実際に生活する場面を念頭に置きつつ、有する認知機能等の能力をしっかりと見極め、これを最大限に活かしながら、ADL(食事、排泄等)や IADL(掃除、趣味活動、社会参加等)の日常の生活を自立し継続できるよう推進する。」と示されています。
作業療法では医学的知識に基づき、認知症の方の環境や個人の背景因子も含めた相互に関連する生活全体を捉え、ひとりひとりの生活がしやすくなるよう環境調整や身の回りの工夫、周囲の方の関わりへの助言などを行います。

  

平成28年度老人保健健康増進等事業「認知症のリハビリテーションを推進するための調査研究事業」より
「認知症のリハビリテーションに基づく、生活行為を続けるためのヒント集」

 

都道府県の作業療法士会が様々な取り組みをしています

各都道府県にある作業療法士会では、作業療法士が認知症の方を支援するにあたってのスキルアップのための研修会の実施や、自治体が行う事業への協力、家族会等への支援に取り組んでいます。新型コロナウイルス感染症の拡大状況を様子見しながらではありますが、徐々に対面でのイベントも予定され始めているようです。また、コロナ禍でweb研修や遠隔地を結んでのwebイベントも普及してきており、活動の幅が広がっています。各都道府県士会の活動については下をクリックしてご覧ください。

こちらをクリックすると士会活動の一覧ページが開きます
士会活動2022へのリンク

作業療法士は認知症のある方とそのご家族を医療機関だけでなく地域の様々な場所で支援しています

これまでホームページ等に掲載した記事を紹介します

認知症の方とご家族の支援をしている作業療法士2人のインタビュー

「共感的な理解」には、認知症の方を笑顔にする力がある
読む▷

matsushita
森ノ宮医療大学 松下太さん

認知症の方の「困りごと」解決のための3つのステップ
読む▷

yamaguchi
群馬医療福祉大学 山口智晴さん



初期集中支援チームにおける作業療法士の役割

認知症になっても、その人らしく地域の中で暮らし続けることができるために、さまざまな取り組みが行われている。「認知症初期集中支援チーム」は、認知症が疑われる段階から積極的に支援に関わることで、認知症当事者が地域で暮らし続けることを支援するための、多職種による取り組みだ。この取り組みにおける作業療法士の役割を探る。

初期集中支援チームの山口さん

群馬県前橋市では2013(平成25)年から、国のモデル事業として「認知症初期集中支援チーム」が設置され、認知症の方やその家族を訪問支援する取り組みを行っている。「認知症では、初期の対応が非常に重要なのです。これまでは、医療・福祉サービスにつながる前の段階での支援体制が整っていなかった」と話すのは、前橋市認知症初期集中支援チーム(以下、支援チーム)の作業療法士・山口智晴さんだ。認知症の方やその家族が「認知症になっても安心して生活していく」ためには初期の対応が非常に重要であるとの考えから、初期集中支援を行っている。続きはこちら

 

認知症カフェにおける作業療法士の取り組み

「認知症対応型カフェ(以下『認知症カフェ』)」をご存じだろうか? 認知症の方とその家族を中心に、当事者や家族同士、地域の方々、あるいは医療・福祉の専門職との出会いの場、交流の場として、近年注目されている取り組みだ。認知症カフェに携わる作業療法士を取材した。

れもんカフェの入り口の様子

京都府宇治市、駅から徒歩20分と、少し離れたところにあるカフェ。ある日曜日の午後、その小さなカフェは、多くの人で賑わっていた。入り口の看板には「ようこそ、れもんカフェへ」の文字。「れもんカフェ」とは、宇治市内で開催されている「認知症カフェ」の名称だ。この日は、認知症の当事者、あるいはその家族を中心に、30人以上の人が「れもんカフェ」に集まった。続きはこちら



若年性認知症コーディネーターとしての取り組み

認知症の中でも、65歳未満の人の認知症を「若年性認知症」という。患者数が少ないせいもあってか、「若年性認知症」という病気は、まだあまり知られておらず、支援体制も整っていないという。若年性認知症の支援を行う「若年性認知症支援コーディネーター」として活動する作業療法士の姿を追った。

東京都町田市に住む58歳の男性、Aさん。3年前に若年性認知症を発症した。発症当時は、大企業に勤務し管理職として活躍していたが、次第に記憶障害などにより、業務に差し支えが出るようになったという。勤務する企業の産業医から相談を受けたのが、東京都目黒区にある「NPO法人いきいき福祉ネットワークセンター」に勤務する作業療法士であり、若年性認知症支援の当事者や家族を支援する「若年性認知症支援コーディネーター」である駒井由起子さんだ。続きはこちら

 

関連リンク

厚生労働省 世界アルツハイマーデー及び月間(令和5(2023)年度)

公益社団法人 認知症の人と家族の会 世界アルツハイマー月間2023