WFOT総会&WFOT大会レポート
第37回WFOT総会 出席報告
WFOT Congress 2026の開催に先立って、2026年2月5日から2月7日までの3日間、第37回世界作業療法士連盟(World Federation of Occupational Therapists:WFOT)総会がタイ・バンコクで開催されました(写真1・写真2)。本会からは大庭潤平WFOT代表(副会長)、高橋香代子WFOT第1代理(常務理事)、上梓WFOT第2代理(国際部統括課長・事務局員)、猿爪優輝氏(国際部員)の4名が出席しました。
本稿では、WFOT 総会の様子や議論された議題とその結果について報告します。また、現地で開催されたアジア太平洋作業療法地域グループ(APOTRG)と韓国作業療法士協会(大韓作業治療師協会)の第9回アジア太平洋作業療法学会(APOTC2028)開催に向けた合意文書(MOU)の締結についても触れます。

写真1 WFOT総会開会式

写真2 WFOT総会集合写真
WFOT総会の概要
今回の総会は59協会から89名の参加がありました。非常に光栄なことに、事前にWFOTから本会に対して、初めて代表者会議に参加するJulija Ocepek氏(スロベニア作業療法士協会WFOT代表)のメンター依頼があり、事前準備についての助言、現地でのオリエンテーション等、対応しました。会議は、1)議題に対する審議・報告、2)フォーカスセッションをすべて3日間で終えるスケジュールでした。以下に、1)2)の概要を一部抜粋して報告します。
1)議題に対する審議・報告
(1)WFOT作業療法教育基準の改訂
教育基準の改訂に向けては、WFOT理事会での協議と加盟国へのアンケートから開始され、第三者機関のレビューのうえ、加盟国への説明会と追加アンケートにより改訂の内容が議論されました。今回の改訂のポイントは主に、①修了資格の基準と②オンライン学習やシミュレーション型実習の取り扱い、そして③作業療法士に求められる能力(Competency)についてでした。
①修了資格の基準については、「2031 年以降にWFOTの認定を受けるためには、学士号(または同等資格)を提供する必要がある」とされました。2031年に認定を受けた場合は、修業年限が2~3年は5年間、4年制は7年間が認定対象期間とされています。つまり、養成課程が学士レベルではない場合は、2036年までWFOT認定を継続できる可能性があります。上記新基準への移行に向けた10年間は、各国の協会がディプロマ課程から学士課程レベルへの移行を進めるにあたり、各国の政府と協働するために相当な時間と労力を要することを考慮して提案されています。
②オンライン学習の取り扱いについて、WFOTからの提案は「オンライン学習の上限(全体の25~40%を超えないことが望ましい)を定める」というものでした。総会では、「地理的な課題(物理的な距離、通信環境等)を解決するため、オンライン学習を導入する必要がある」とスウェーデンより動議が出され、オーストラリアをはじめとするオンライン学習を積極的に導入している加盟協会から賛同もあり、投票の結果、オンライン学習の上限を定めないかたちで承認されました。
また、シミュレーション型実習およびオンラインによる実践を臨床実習の一部として活用することが可能である一方、「臨床実習要件全体の20?30%を超えないことを推奨する」旨が明記されました。いずれの教育方法においても、「作業療法士に必要な能力(コンピテンシー)を習得するためには、対面での教育による補完が不可欠である」ことが前提とされています。
③Competencyについては、これまで教育基準の文書のなかに含まれていましたが、別文書として切り離され、新しい教育基準と併せて用いられることとなりました。
(2)新規加盟組織
ベトナムとモンゴルの作業療法士協会が正加盟組織として承認され、準加盟組織としてアラブ首長国連邦、モルディブ、ハンガリー、オランダ領シント・マールテンの作業療法士協会が承認されました。今回の会議をもって、WFOT加盟組織は、正・準・地域グループを合わせ合計117となりました。
(3)決算書(2024-2025)および予算書(2026-2027)
WFOTの2年単位の活動に対する財政状況について、報告がなされました。現在は支出が収入を上回っているため、収益を増やすための戦略や個人会員の会費徴収方法について、財務の健全性確保に向けたさまざまな議論がなされました。
2)フォーカスセッション(写真3)
与えられたテーマ(「Navigating Complex Global Issues」、「Global Workforce Strategy, Mental Health and Data」、「Membership, Sustainability and Growth」、「Advocacy for National, Regional and Global Impact」)についてディスカッションを行いました。世界各国の代表が集まるWFOTならではのテーマについて、作業療法士がどのようにかかわっていくかの議論が交わされました。

写真3 フォーカスセッションの模様
APOTC2028に向けて
総会期間中にAPOTRGの集会も開催され(写真4)、大韓作業治療師協会とAPOTRGがAPOTC2028開催に係るMOUを交わしました。2028年5月開催予定(日程未定)で、準備が進められています。
総会に出席して
今回の総会では、「作業療法教育基準の改訂」が大きなトピックスであり、著しい変化が生じている世界のなかで、「作業療法士に必要なcompetencyは何か、そしてどのように教育するか」を議論し続けることの重要性が感じられる総会でした。WFOTの動向に注目することは、日本の作業療法教育の在り方を再考する契機になり、世界基準の質の高い作業療法士養成につながる可能性があります。また、総会への参加を通じた世界各国の事情との対比は、日本の作業療法教育の独自性を言語化することにつながると考えられました。
第19回世界作業療法士連盟大会 印象記
2026 年2 月9日~12日の4日間にわたり「第19回世界作業療法士連盟大会(WFOT Congress 2026、以下WFOT大会)」がタイ・バンコクで開催されました。ここに参加・発表された会員の声をお届けします。
今大会への日本からの参加者数は、アメリカに次いで第2位でした。世界中から作業療法士が集まるWFOT大会において日本の作業療法士が存在感を示しており、日本の作業療法の国際化に向けての勢いを感じました。2030年のWFOT大会の開催地は2026年中に発表される予定ですので、楽しみにお待ちください。
順天堂東京江東高齢者医療センター 阿瀬 寛幸
今回は単独で旅程を組み参加し、日本におけるがん作業療法の実践について全国調査の結果を発表しました。
Lightning talkという形式で口述発表を行うのは、初めての経験でした。WFOTは多くの国内学会と異なり、既出発表の制限がなく、既に論文化されたものや実践報告も多くありました。参加者は「作業療法を語る、伝える」熱意が強く、質疑応答やフロアのディスカッションも活発でした。
発表準備では、医療制度や社会保障、文化的背景の違い等により作業療法士に求められる役割や働き方が国によって大きく異なる点を意識しました。また、研究の動機や目的の直後にKey messageを十分に含み、思いを伝えることを重視しました。座長はとても丁寧に対応してくださり、発表前の雑談で「初めての口述で緊張している」と話すと、発表後に「彼は最初の国際発表をパーフェクトに完遂しました! おめでとう!」と紹介してくれました。大きな拍手とともに、“Congratulations!”と、たくさん声をかけていただき、まるで新たな自分を祝ってくれるような雰囲気でした。発表後もそのまま会場で議論し、発表に興味をもった各国の方々から声をかけていただき、意見交換や連絡先交換をすることができました。
英語が話せないと参加できない?
私は英語が流暢ではなく、フリートークになれば聞き取れないこともあり、思いを伝えられずもどかしく感じることも多々あります。しかし、参加者の多くも同様であることを知りました。とても流暢な発表をされた中東の方にフロアで質問すると、彼女は「私は英語がわからないので、アプリを使ってもいいですか?」と話し、その方の母国語と日本語で翻訳アプリを使って会話をしたこともありました。それでも十分に意思疎通はできましたので、英語スキルの有無は参加をためらう理由にはならないと感じました。
また、日本からのほかの参加者が積極的に交流していると聞き、私も円卓でランチを食べてみました。すると「ここいい?」と自然と人数が増え、各国の話題で盛り上がりました。一人で参加しても、すぐに一人ではなくなることもわかりました。
日本では失敗と感じてしまうことも温かく受け入れられる雰囲気は、参加者だけが体験できるものだと思います。参加を迷われている方の背中を少しでも押すことができれば幸いです。

写真5 発表後、座長の Melissa Tilton 氏と
※阿瀬氏は2025年度海外研修助成制度(追加募集)に採択されました
山形県立中央病院 金子 隆生
はじめに
今回のWFOTバンコク大会は、私にとって初めての海外での国際学会参加・発表でした。出発前は、英語でのやり取りや現地での動き方、発表が無事にできるか等、不安な気持ちが大きく、緊張しながら会場に向かいました。しかし、実際に会場へ着いてみると、多くの日本人の知り合いの先生方とお会いすることができ、一気に安心したことを覚えています。海外の学会でありながら、どこかホームのように感じられ、不安が和らいだことはとても印象的でした。
発表したプログラムと学会で得たもの
私の発表は、運動器作業療法研究会(SMOT)のメンバーの方々と取り組んだシステマティックレビューに関するものでした。日頃から積み重ねてきた検討内容を国際学会という場で発信できたことは、大きな学びとなりました。今回の学会ではレビューに関連する演題を多く目にすることがあり、研究内容を改めて整理し、自分たちの取り組みを見つめ直す機会になったと感じています。
また、現地では世界各国の作業療法士による多様な実践や研究発表に触れることができました。日本とは異なる制度や文化的背景のなかで展開される作業療法を目の当たりにし、作業療法の広がりと可能性を実感しました。世界の作業療法士の実践を直接見ることができたことは、私にとって非常に良い経験でした。
おわりに
日本作業療法士協会の国際部の先生方が現地での懇親の場を設けてくださり、新たな交流が生まれました。バンコクという異国の地でありながらも、日本の先生方の熱い思いや現在進めておられる研究のお話を伺う機会にもなり、非常に勉強になりました。あっという間の数日間ではありましたが、多くの学びと気づきを得る機会となりました。今回の経験を今後の学会発表や論文作成にも活かし、さらに発信を続けていきたいと思います。

写真6 eポスター形式での発表概観
※金子氏は2025年度海外研修助成制度(追加募集)に採択されました
株式会社 奏音 いろは訪問看護リハビリステーション 白井 若奈
学会参加を通して
このたび、初めて国際学会に参加しました。そこでの経験は自分の視野が大きく広がる貴重なものとなりました。今回、私は訪問作業療法で行った子どもの偏食改善の取り組みについて、eポスターとして採択をいただきました。会場の端末での掲示となり、直接的なディスカッションは多くはありませんでしたが、日々の取り組みを自分の言葉でまとめ、会場やオンライン上で多くの方に見ていただき意見をいただけた体験は、自分の考えをより深く捉える機会となりました。
シンポジウムの聴講では照明が華やかで日本の学会とは違った空気感があり、とても新鮮に感じました。会場ではさまざまな国の言語が飛び交い、活発な交流がなされていました。参加者の服装や雰囲気も日本の学会とは異なり、発表はすべて英語というこれまで経験したことのない空間に圧倒されました。最初は自分とは全く違う世界で活躍されている方々のように感じましたが、発表を聴講するうちに、言語の難しさはありつつも、携わっている小児や発達の分野であれば内容を理解でき、作業療法で取り組んでいることの本質は世界中で変わらないのだと実感しました。
また、多くの発表を聴講するなかで、地域性や文化的背景の違いを知り、自分がとても狭い世界しか知らなかったことを痛感しました。世界中にこれほどたくさんの作業療法士がいて、それぞれが日々臨床に真摯に向き合っているのだと体感できた瞬間でした。
参加前は敷居が高く感じられた国際学会でしたが、拙い私の英語でも皆さんがなんとか理解しようとしてくださり、その温かさに触れられたことも印象的でした。
おわりに
日本から遠く離れたタイの会場で、長崎大学の頃の同級生や恩師と再会しました。普段はそれぞれの場所で実践を重ねていても、学会という機会を通して世界中の人と交流したり再会したりできる作業療法士という仕事は本当に面白いなと感じた次第です。学会で得られた多くの刺激を糧とし、今後を見据えて精進したいと思います。

写真7 シンポジウム会場の様子

