生涯教育

専門作業療法士とは?

▼専門作業療法士制度

専門作業療法士を目指す方へ

 作業療法士は、常に最高水準の知識と技術・技能を保つことが社会的に求められています。そのためには、学術的研鑽を積極的、継続的に行い、専門性をより高める努力が極めて重要です。
 日本作業療法士協会は、作業療法士の質の向上を目的として平成10年に「生涯教育単位認定制度」を創設しました。その後、第三次長期計画を踏まえ、平成15年に「生涯教育制度」へ改正を行い、同時に「認定作業療法士制度」を創設しました。さらに、平成21年度からは「専門作業療法士制度」を始動することとなりました。
 専門作業療法士制度は、認定作業療法士である者のうち、特定の専門作業療法分野において「高度かつ専門的な作業療法実践能力」を有する者を専門作業療法士として認定することとしています。専門作業療法士とは作業療法の中のある分野をより深く知り、その分野における高度な課題解決能力を有する人たちです。つまり、この専門作業療法士は次の3つの役割を果たす能力を満たします。

  • (1) 専門作業療法士分野において、高い見識(物事を見通す優れた判断力)と優れた技術力
  •        (技術の向上・洗練と新しい技術の開発応用能力)によって卓越した作業療法を実践する
  •        ことができる能力
  • (2) 専門作業療法士分野において、困難な事例に対応できる能力
  • (3) 認定作業療法士のもつ能力を専門作業療法士分野で応用できる能力。すなわちその能力
  •        とは、作業療法士の実戦能力を向上させるため教育能力、専門家集団を率いて統率・指導
  •         を行う能力、専門知識及び技術の向上並びに開発をはかるために実践の場における研究
  •         活動を行う能力

 専門作業療法士制度の目的は、卓越した臨床実践能力をもつ実践者を養成することにより、障害をもつ人々へ良質で、より効果的な作業療法サービスを提供し、対象者の生活支援に貢献することです。その為には、スペシャリストである専門作業療法士はジェネラリストとしての認定作業療法士の視点を生かしながら、国民に高品質のサービスを提供するプロフェショナルである必要があります。さらに、国民の健康・障害への意識や医療福祉制度が急激に変化する社会において、作業療法がどのように貢献できるのかを示す重要な役割を担っています。
 2013年度、生涯教育制度改定2013の施行に伴い、専門作業療法士制度は、①資格認定において試験を実施すること、②更新制度を導入すること、などの点において制度の拡充を図りました。近年の他学会・団体の資格認定にあたっては、その質の保証や認定方法の公正性等がより求められています。作業療法士という知的専門職集団が取り組む制度としてふさわしい形に整え、良質な作業療法を提供していくことは協会の責務であると考えています。
 専門作業療法士の認定取得を目指す会員は、手引書の内容を熟読し、専門作業療法士取得の流れをご確認ください。

専門作業療法士とは?

 生涯教育制度は作業療法士の継続的な自己研鑽を支援するための「生涯教育基礎研修」と、作業療法の臨床実践、教育、研究および管理運営に関する一定の能力を習得するための「認定作業療法士制度」、さらに高度かつ専門的な作業療法実践能力を取得するための「専門作業療法制度」から構成されています(下図参照)。

専門作業療法士制度

 専門作業療法士とは、認定作業療法士である者のうち、特定の専門作業療法分野において「高度かつ専門的な作業療法実践能力」を有する作業療法士を指します。つまり、作業療法の中のある分野をより深く知り、その分野における高度な実践能力、課題解決能力を有する人たちです。
 その役割としての3つの能力は、

  1. 専門作業療法士分野において、高い見識(物事を見通す優れた判断力)と優れた技術力(技術の向上・洗練と新しい技術の開発応用能力)によって卓越した作業療法を実践することができる能力。
  2. 専門作業療法士分野において、困難な事例に対応できる能力。
  3. 認定作業療法士のもつ能力を専門作業療法士分野で応用できる能力。すなわちその能力とは、作業療法士の実戦能力を向上させるため、教育能力、専門家集団を率いて統率・指導を行う能力、専門知識及び技術の向上並びに開発をはかるために実践の場における研究活動を行う能力。

専門作業療法士の取得要件

 専門作業療法士取得の流れは下図に示すとおりです。

取得の流れ

 専門作業療法士を取得するためには、次の取得要件が必要となります。

取得要件

1) 認定作業療法士であること
   専門作業療法士取得の流れは下図に示すとおりです。
2) 4実践を修了または満たすこと
      4実践とは、研修実践、臨床実践、研究実践、教育と社会貢献の実践の4つであり、それぞれ専門単位
      数を設定しています。具体的内容と専門単位数は下図のとおりです。
3) 専門作業療法士資格認定審査(試験)に合格すること

取得要件と単位数

研修実践の内容:構造と進め方

 研修実践では、専門分野ごとにカリキュラムが定められ、「専門基礎」研修、「専門応用」研修、「専門研究・開発」の3つの段階にわけられます。「専門基礎」研修では、各分野に応じた対象者に対して適切な評価・治療を実施できることを習得します。「専門応用」研修では、特殊な事例(困難事例や少数事例)にも対応できる能力や後輩の育成・指導ができる能力を習得します。さらに、「専門研究・開発」では、専門分野における研究・開発に携わり、その結果を広く伝達する能力を習得します。
 3つの段階は、専門基礎→専門応用→専門研究・開発と進む場合や専門基礎が修了後、専門応用と専門研究・開発が並行して進む場合があります。上位の段階を受講するために、進級要件が設定されている専門分野もあります(下図参照)。

構造と進め方

研修実践の3つの方法

  • 1) 日本作業療法士協会主催の研修
  • 2) Special Interest Group(SIG)と協会が協力して開催する研修
  • 3) 大学院教育

 研修会へ参加することで、専門単位を修得することになります。
 また、専門分野によっては指定の学会・研修会への参加を求める場合もあります。専門単位の修得が可能な大学院は、協会ホームページで確認ください。

 *「専門基礎」研修、「専門応用」研修、「専門研究・開発」の各段階で開催される研修会への参加や学会等への参加は、生涯教育制度基礎研修ポイントにもカウントされます。

臨床実践の内容

 臨床実践では、最終的に専門分野での十分な事例数を経験しているか、またその専門分野で十分な勤務経験があるかを確認します。すなわち、各専門分野での高度な臨床実践能力を量的に確認します。このために専門分野ごとに必要な事例の種別と数、また一定時間以上の勤務経験が定められています。 認定申請の際に、事例数と勤務経験を報告していただきますので、協会入会後自己管理にて記録を残しておいてください。

研究実践の内容

 研究実践では、専門分野での高度な臨床実践の成果をまとめた論文、著書、学会発表の実績を確認します。すなわち、各専門分野での高度な臨床実践能力を質的に確認します。論文は、機関誌「作業療法」をはじめ、専門分野ごとに対象となるジャーナルを規定してありますので確認が必要です。同様に、学会発表も協会主催学会、都道府県士会学会に加え、専門分野により対象となる学会が規定されています。
 また、「事例報告登録制度」を用いた数例の事例報告も要件として設定されています。

教育と社会貢献の実践の内容

 専門作業療法士として認定をうけるものは、後輩育成のための教育実践や専門分野にかかる社会貢献を実践している必要があります。教育実践は、研修会等での講師、シンポジスト、専門作業療法士のための臨床研修の指導などが該当します。同じく社会貢献は、論文査読、学会・研修会の運営、自治体事業への参画、ボランティア協力など、専門分野にかかる社会的貢献が該当します。
 他の3つの実践を進めながら、同時に専門分野ごとに規定した教育と社会貢献も積み重ねていきます。

専門作業療法士資格認定審査

 専門作業療法士資格認定審査には、書類審査と資格認定試験があります。書類審査では、申請する専門作業療法士分野の取得要件1,2を確認します。書類審査に合格すると、専門作業療法士資格認定試験を受験することができます。資格認定試験に合格することにより、専門作業療法士の資格を得ることができます。

専門作業療法士の認定申請の流れ

 専門分野の取得要件1,2を満たした会員は、専門作業療法士の資格認定審査を定められた期間内に協会事務局へ申請(受験申請)します。申請された書類は、教育部教育関連審査委員会にて審議され承認されれば、専門作業療法士資格認定試験が受けられます。試験に合格した会員は理事会の承認を経て、専門作業療法士として認定されます。認定された会員には、専門作業療法士認定証が発送されます(下図参照)。

申請の流れ