会費(2025年度)の使いみち

会員の皆さんには毎年、会費をお納めいただいていることに感謝申し上げます。普段皆さんは一般的な商品やサービスを受け取るために金銭を支払っているかと思いますが、本会の会費もこうした「買い物の代金」なんだと捉えてしまうと、本質を見失ってしまいかねないと思われます。そこで今回のトピックスでは、この「会費」に焦点を当て、何のための会費なのかについて考えてみたいと思います。

 

 

あなたの会費が作業療法を盛り上げる

本会は「作業療法士の学術技能の研鑽及び人格の陶冶に努め、作業療法の普及発展を図り、もって国民の健康と福祉の向上に資すること」(定款第3条)を目的とする団体です。ということは、協会が行うほとんどの事業の最終目的は「国民の健康と福祉の向上に資する」ために行われていることになります。

たとえば協会の代表的な事業として、生涯学修制度があります。学びを通じて作業療法士の専門性を維持・向上できるように、その一つの手段として登録作業療法士・認定作業療法士・専門作業療法士という認定資格制度やさまざまな研修会があるのです。ですから、会員が研修会を受講したり、認定資格を取得したりすることは、あなた個人の臨床能力を高め、キャリアアップになると同時に、あなたを含む作業療法士全体の資質の向上につながり、そのような資質にあふれた作業療法士が行う作業療法であればこそ、国民の健康と福祉の向上により一層貢献できるはずだ、と考えているわけです。

作業療法の対象者に常に最良の支援を提供することは、国家資格保持者としての公的な使命です。作業療法士の生涯学修だけでなく、日本作業療法学会や学術誌等での学術研鑽、医療保険や介護保険制度、障害福祉サービス等のなかでの適材適所の配置や重点化、新しい職域の開発、利用者や他職種に対する広報や普及活動、内外関係団体との連携交流等、協会のすべての事業活動は直接的にも間接的にもこの公的な使命を達成することに向けて行われています。

そしてこれら協会の事業活動を、この規模の団体に相応しく量的にも質的にも適切に実現するためには、それなりにお金がかかります。そのための資金となるのが、会員の皆さん一人ひとりからいただいている会費なのです。つまり会費は、会員一人ひとりがその構成員となって協会の公益的な諸事業を推進していくための“拠出金”なのです。

 

 

会費は、何に使われているのか

1)2025年度はいくら使われた?

それでは、皆さんの会費は何に使われているかを、もう少し詳しくみていきましょう。

2025年度の諸経費の合計額は8億5,057万3,876円。このうち事業費が3億7,112万6,510円、管理費が4億7,944万7,366円でした。もちろん諸経費は、皆さんからいただく会費収益額に基づき、それを超えないように予算案を立てて半年間にわたり調整を繰り返して決定されています。

上に書いたように、協会が組織を維持し、事業を行っていくために使うお金、つまり諸経費は主に事業費と管理費に大別されます。事業費は、協会が定款第7条に掲げた公益的な目的の諸事業のために支出する諸費用。学術部、教育部、制度対策部、地域社会振興部、国際部、生活環境支援推進室、MTDLP室、制作広報室が事業を行ううえで使うお金です。管理費は、それ自体は直接的に公益目的事業のための出費ではありませんが、日本作業療法士協会という法人組織を管理運営するための諸費用、言わば“ベースキャンプの設置代”のようなものです。

 

2)皆さんの会費を効率よく使うための戦略

  皆さんからいただいている会費は、無駄なく効率的に使わなければなりません。そこで、協会は財務のあるべき方向性を明示した「財務管理指針」を策定し、2024年度第1回定例理事会(2024年4月20日開催)にて上程、承認され、同年度の定時社員総会にて報告されました。

  この指針の目的は、会員の会費を主たる原資とする本会の資金が、定款および基本理念に沿って実施される本会の事業と組織運営のために適切に費消(運用)されるよう、その基本的な考え方を提示することにあります。具体的には、収支状況の把握と明確化、財政シミュレーションの実施、本会の方針(基本理念もしくは活動方針)に照らした事業選定、戦略的な意図や費用対効果を踏まえた資金配分、財務指標を用いた財務分析等、財務管理のあり方や方法の骨子を示します。

この指針のもと、財務に関する外部専門家を交えた戦略会議を随時開催して、効率的で望ましい財務施策を検討し、予算案策定に反映していきます。

 

3)2025年度事業費・管理費を一人分の会費に割り当てると……

2025年度の事業費は3億7,112万6,510円でしたが、人件費を除いた使いみちとして大きかったのが委託費(7,876万3,204円)、通信運搬費(5,865万9,255円)、印刷製本費(5,580万8,747円)でした。

各部・室が事業を行ううえでは必ずしも部員・室員、事務局だけでは実現できないものがたくさんあります。代表的なものが日本作業療法学会の運営です。多くの会員が参加する学会を円滑に、かつ盛会裏に開催するためには専門的なコンベンション企業のバックアップが必要です。あるいは、郵便物を全会員にお届けするに当たっては、事務局のマンパワーだけでは約6万通の郵便物をつくり、投函することは不可能です。こうした事務作業にも必要に応じて外部の専門業者の力を借りることになります。本会が円滑に動くためには外部の専門家や専門業者に委託することが不可欠なのです。なお、総務部が管轄する管理費においても、委託費は多く支出されていました(9,406万3,000円)。これは法人を維持するのに必要な業務のうち、アウトソーシングが必要なものになります。顧問弁護士や公認会計士の料金からインターネット選挙システムの委託料金までさまざまなものが含まれます。

ペーパーレス化が進んでいるとはいえ、本誌を含めたさまざまな資料の作成・配布は事業遂行のうえではまだまだ不可欠で、印刷製本費も大きなものになっていきます。加えて、本会には全国に約6万人に上る会員がいます。本誌のように全会員に向けて印刷し、さらにはお手元まで郵送するとなると、通信運搬費もセットでかかってきます。こうした会員への郵送物だけでなく、学会等で必要な物品を全国各地に送ることも少なくありません。本会が全国組織であるがゆえの必要経費と言えるでしょう。

事業費と並ぶもう一つの柱が、総務部が管轄する管理費です。2025年度の管理費は4億7,944万7,366円で、事業費を上回っています。管理費の使いみちとして大きかったのが、減価償却費(1億5,525万6,481円)でした。これは昨年度リリースした新しい会員管理システム等の開発にかかわるものが多くを占めます。次に人件費関連(役員報酬・職員の給与手当・退職給付費用)で合計して7,357万5,705円でした。福利厚生費も2,967万9,073円で大きいものになっています。これは主に、会員の皆さんが加入している総合補償制度等の保険料が挙げられます。次に大きいのは賃借料ですが、これは事務局のオフィスの賃借料のことで2,508万2,138円です。

このように数億円、数千万円という金額は大きすぎて、実感がわきづらいと思います。そこで、これを12,000円という一人分の会費額に割り当てると、皆さんの会費がどこにいくら使われているのかイメージしやすいと思います(表・図参照)

  

 

 

 

会費を払うメリットvsデメリットを超えて

「会費を支払うメリットは何か?」という問いを時々耳にします。この問いに対して、会費を払い、協会員であることのメリットとして「学会や研修会に参加できる」「機関誌等を通じて情報を得ることができる」等、具体的なメリットを挙げることもできます。一方で、「メリットを感じられないから」という理由で協会を退会していく方がいるのも(残念ながら)事実です。たしかに、通常の買い物のように、会費は「お金を払えばすぐに商品やサービスを得られる」というものではないので、お金を支払った効果を立ちどころには感じられないかもしれません。

少し視点を変えて考えてみたいと思います。

作業療法が何であり、それをどのように体得すべきかを、自分一人の力で究めた人はいません。

作業療法士として働く場があること、作業療法士の専門性が評価され、それに対する報酬が設定されていることを、自分一人の力で国や団体等と交渉して一から開拓し獲得した人はいません。 

今のこの激動する時代に、作業療法士にどのような知識や技能が求められているかを、自分一人の力で調査し、情報を得、自分一人の力でそれに相応しい的確な内容と方法で自己研鑽ができている人はいません。

作業療法の有用性を広め、その社会的信用を築くために、全国を行脚して普及・振興を一人だけで行っている人はいません。

これらのことはすべて、全国から作業療法士が集まり、本会を築き上げ、60年の歳月をかけた組織的な取り組みを通して、学術的な知見を積み上げ、教育研修を通して専門職としての質の維持・向上を図り、その有用性の普及・振興に努め、全国組織であればこそ相手にしてくれる国や他団体に対して粘り強く交渉を重ねてきた成果なのです。

60年前に灯ったともしびはたしかに大きくなりました。しかし、大きくなったからとはいえ、その火は未来永劫消えることがないという保証はどこにもありません。これからも作業療法士という専門職があるかぎり絶えず、あなたが選び、愛し、誇りに思っている作業療法を盛り上げ続けていかなければなりません。

「会費を支払うメリットは何か?」という問いに戻りますが、その答えは、端的に言うと「本会が将来にわたって存続できること」だと言えます。そして、本会が存続することの、会員にとってのメリットとは、あなたが作業療法士として働き続け、成長することに対して、“一人ではできない”サポートを得られるということになるでしょう。それがひいては、多くの患者さん・利用者さん・ご家族・地域住民の方々の健康と幸せへとつながっていくのです。

会員の皆さんから拠出していただいている会費は作業療法士という専門職が存在することの良さ、作業療法の存在意義をさまざまな側面から実現していくためにこそ使われています。会員一人ひとりの側からみると、あなたは協会が提供してくれるサービスの“受け手”に過ぎないかもしれません。しかし、協会の目的と作業療法士の公的な使命というより本質的な観点からみれば、会員の皆さんは協会活動の主体つまり“担い手”であり、この使命を我が事として実現し、自ら推進していく当事者なのです。協会のこうした役割を果たせるよう、協会の当事者であるあなたの会費が正しく使われているか理解を深めていただき、協会運営等にご意見もいただければ幸いです。