学会NOTE 第3回 教育セミナーで広がる、作業療法の“幅”と“奥行き”
第60回日本作業療法学会(新潟)のご案内
テーマ:脳機構から読み解く作業療法の挑戦 ─『作業』によってあなたも私も満たされる─
会 期:〈現地開催〉2026年11月20日(金)・21日(土)、22日(日)※日曜日午前で終了
〈オンデマンド配信〉2026年11月20日(金)~2027年1月11日(月)
会 場:朱鷺メッセ 新潟コンベンションセンター
学会ホームページ:https://ot60.umin.jp/index.html学会長:種村 留美(関西医科大学リハビリテーション学部)
第60回日本作業療法学会ロゴ
第60回日本作業療法学会は、2026年11月20日(金)から22日(日)までの3日間、新潟市の朱鷺メッセで開催されます。本学会のテーマは「脳機構から読み解く作業療法の挑戦―『作業』によってあなたも私も満たされる―」です。第1回の学会NOTEでは学会長の本学会に込めた思いや目指す方向性が紹介され、第2回では一般演題を通して学ぶ意義や聴講のポイントが示されました。第3回となる今回は、「教育セミナー」に注目します。
一般演題が全国の作業療法士による実践や研究の成果に出会う場であるのに対し、教育セミナーは、特定のテーマについて体系的に学び、自分自身の実践を見つめ直す場です。臨床で感じている疑問や、教育・研究、地域実践のなかで深めたい課題を、第一線で活躍する講師の視点から学び、明日からの作業療法に結びつける機会となります。
今年の教育セミナーは、3日間にわたり15のテーマで実施される予定です。脳機構・認知機能・精神機能、地域生活、学校、がん、摂食嚥下、園芸、回想法、3Dプリンター、アントレプレナーシップ等、扱われる領域は実に多様で、作業療法の幅の広さと奥行きの深さを感じさせる内容となっています。

朱鷺メッセ外観
脳機構から作業療法の実践を読み解く
本学会のテーマと強く響き合うのが、脳機構を手がかりに作業療法を読み解くセミナーです。「脳機構に基づくICU作業療法―超急性期から認知・精神機能障害に挑む―」では、超急性期における作業療法の可能性に迫ります。ICUでの作業療法は、身体機能への介入にとどまらず、せん妄や意識、認知、情動へのアプローチ、さらには生活再建への入り口をどう支えるかという重要な課題を含んでいます。
また、「高次脳機能障害作業療法の最前線―脳機構と症状から核を見出し、事例を読み解く―」「脳卒中を脳機構から読み解く専門作業療法士の挑戦」「人のこころと脳機構―社会適応のための理解―」「作業が脳を再編する―CI療法実践からの示唆―」等、脳と作業の関係を臨床の言葉で捉え直すテーマが目白押しです。これらは、脳の知識を単にインプットするためのセミナーではありません。症状の背景にある機構を理解したうえで、対象者の行動や生活をどう読み解き、介入の糸口をどう見いだすのかを考える機会となるでしょう。
生活と地域に広がる作業療法の実践知
教育セミナーの魅力は、専門的な知識を生活や地域の文脈へと結びつけて考えられる点にもあります。「がん関連認知機能障害と作業療法」では、がん治療や療養生活のなかで生じる認知機能の変化に対し、作業療法がどのように関与し、日々の生活を支えていけるのかが取り上げられます。治療と生活の両立、役割の再構築、その人らしい時間の回復等、がん領域における幅広い課題を考える機会になるでしょう。
「観光資源を利用したパーキンソン病の作業療法」も、本質的な広がりを感じさせるテーマです。観光という地域資源を、疾患のある人の活動や参加、外出意欲、そして地域とのつながりにどう活かすのか。これは、病院や施設のなかだけでは完結しない作業療法の可能性を示しています。また、「コミュニティに住まう高次脳機能障がいの作業療法」では、退院後の地域生活のなかで見えてくる困りごとに、作業療法士がどのように伴走できるのかが問われます。
こころ・暮らし・参加を支える作業療法の広がり
今年の教育セミナーには、こころや暮らしの豊かさにふれるテーマも多く含まれています。「こころとからだと脳を癒す園芸作業療法」では、園芸という身近な作業を通して、身体機能、認知機能、情動、社会性がどのように結びつくのかを学ぶことができます。土に触れ、植物を育て、季節を感じる営みは、対象者の内側にある力を引き出す大切な媒介となります。
「作業療法に活かす回想法~対象者との相互作用に着目して~」では、思い出を語り合うことを通して、対象者との関係性を深め、意味のある作業をどのように支えるのかに焦点が当てられます。さらに、「“食べる”を支える:摂食嚥下障害・低栄養に対する作業療法の実践」では、生命維持としての食事にとどまらず、楽しみや交流、習慣、文化としての“食べる”をどう支えるかが問われます。「インクルーシブ教育システムにおける学校作業療法」では、学校という生活の場で、子どもたちが「できる」「かかわれる」「自分らしく学べる」環境をつくる、作業療法ならではの可能性が示されます。
表 教育セミナーのテーマ一覧

実践を支える評価・技術・創造性
作業療法の実践をより確かなものにするためには、評価や技術の視点も欠かせません。「QOLを測るときに知っておきたいことのすべて」では、作業療法の成果をどのように捉え、対象者の生活の質をどう評価すべきかを学ぶことができます。QOLは臨床で頻繁に使われる言葉ですが、何を、どの尺度で、いつ計測するかによって、その意味や解釈は大きく変わります。
「臨床実践における3Dプリンターの活用」では、自助具の作製や環境調整等、“その人に合わせてつくる”という作業療法の強みを、テクノロジーによって具体化するヒントが得られます。また、「アントレプレナーシップ教育の効果的な実践」は、自ら課題を発見し、新たな価値を生み出して社会に提案していく力を考えるテーマです。これからの作業療法士に求められる、次世代の視点を示す機会となるでしょう。
新潟で、自分に必要な学びを見つける
今年の教育セミナーは、15のテーマを通して作業療法の“幅”と“奥行き”を改めて実感できる充実の内容となっています。若手にとっては臨床の視野を広げる入り口に、中堅・ベテランにとっては自らの実践を言語化してアップデートする機会に、そして教育者や研究者にとっては次世代に伝えるべき作業療法の「核」を再確認する場になるはずです。
15のテーマのなかには、今のあなたの臨床や教育、研究、地域実践に深くつながる学びがきっとあります。新潟の地で、全国から集う仲間とともに、作業療法の“なぜ”と“これから”を考えてみませんか。教育セミナーで得られる気づきが、明日からの実践を変えるきっかけになることを願っています。皆様のご参加を心よりお待ちしております。

教育セミナーの会場となる朱鷺メッセ内の一室
国際企画プログラム「多様性と協働の時代における作業療法―協会のグローバル化と多文化共生への挑戦― Occupational Therapy in the Era of Diversity and Collaboration:Toward a Global and Inclusive JAOT」
本企画は、第16回世界作業療法連盟大会(2014年、横浜)の日本招致を契機に、日本作業療法学会会期中に実施されています。第60回記念大会となる今回は、作業療法の「グローバル化」と「多様性への対応」を取り上げます。世界の作業療法士協会では、移民・多文化社会への対応や文化的安全性の確立が重要な課題となっています。本会においてもグローバル化、多様性への対応を念頭に置き、「海外研修助成制度」「外国資格OT・外国OTS受け入れ支援事業」「多様な文化的背景をもつ外国人に対する作業療法ガイドライン」等の取り組みが進められています。さらに、2026年度重点活動項目には、「協会のグローバル化へ向けた外国資格を有する作業療法士の協会事業への参画の仕組みを規定」が掲げられています。
本シンポジウムでは、まず国内における作業療法士の活動や役割の広がりを踏まえ、協会の国際事業とグローバル化に向けた取り組みの現状・課題を報告します。海外からは、多文化共生が進むオーストラリアとシンガポールの作業療法士を講師に迎えます。オーストラリアでは、教育水準を維持しながら、海外で資格を取得した作業療法士を受け入れるための資格認定制度の整備が進められています。また、シンガポールでは、教育・医療・地域支援における多文化共生を重視するとともに、作業療法士の国際交流や教育の充実が進められています。
両国の作業療法士協会は、文化的多様性を尊重しながら国際化を進めてきました。その実践から、「日本作業療法士協会の今後のグローバル化に向けて」一緒に考えていけたらと思います。協会の現状と課題を共有し、他国の実践から学ぶことで、日本の作業療法における国際連携と多文化・多様性への対応を、参加者の皆様とともに考える機会となることを期待しています。
〈プログラム概要〉
日 時:2026年11月21日(土)13:40~15:10
会 場:第2会場(朱鷺メッセ 新潟コンベンションセンター 国際会議室)
講 師:Emma George(アデレード大学 健康・人間パフォーマンス学部 准教授 オーストラリア)
Jeyamany Ruth Jacob(シンガポールセンカン総合病院 上級主任/SingHealth グローバル・アライドヘルスセンター長)
座 長:大庭 潤平(神戸学院大学 総合リハビリテーション学部 作業療法学科 教授)
高橋 香代子(北里大学 医療衛生学部 リハビリテーション学科 作業療法学専攻 教授)
言 語:英語(通訳なし。日本語による同時通訳アプリの案内あり)
形 式:対面・シンポジウム形式(後日オンデマンド配信もございます)

Emma George氏(Associate Professor Academic Lead, School of Allied and Human Performance, Adelaide University)

Jeyamany Ruth Jacob氏(Senior Principal Occupational Therapist, Sengkang General Hospital Chair, Centre for Global Allied Health, SingHealth)

