激甚化・頻発化する災害に備えて

2026年7月28日に令和8年熊本地震が、それに続くように8月13日には令和8年8月千葉豪雨が発災しました。被災された皆様には心よりお見舞いを申し上げますとともに、速やかに復旧・復興が進むことをお祈り申し上げます。

本誌では、第150号(2024年9月15日発行)のトピックスで、令和6年能登半島地震を受けて大規模災害時支援活動基本指針等を検討・改定・整備する旨をお伝えしました。その後も、2024年8月に宮崎県日南市で最大震度6弱の地震があり、初の「南海トラフ地震臨時情報」が発表されました。翌9月には大雨災害で能登半島地震の被災地が大きな被害を受けました。2025年は、岩手県大船渡市の山林(2月~4月)・大分県佐賀関(11月)で大規模火災のほか、鹿児島県トカラ群島(6月)や青森県東方沖(12月)では震度6弱~6強の地震が発生しました。そして、今年は既に2つの大きな災害に見舞われることとなりました。

そこで今回は、大規模災害時支援活動基本指針等検討ワーキングを担当した小林毅常務理事に基本指針を踏まえた本会の災害対策の考え方や取り組みについて解説いただきます。また、地域における平時の取り組みとして、四国4県の作業療法士会による連携体制の構築や静岡県士会による所属会員との連絡体制の現状と課題を紹介いたします。本会の災害対策や士会の実践例を理解して、会員各位の所属する士会、周囲の地域の状況と取り組み等を確認して、災害への備えとしてください。

 

 

一般社団法人日本作業療法士協会の取り組み

一般社団法人日本作業療法士協会(以下、本会)は、定款第4条(6)に「大規模災害等により被害を受けた人の自立生活回復に向けた支援を目的とする事業」を掲げ、令和6年能登半島地震の際に災害対策本部を設置し、会員に対してさまざまな支援企画を事業化しました。

2025年度重点活動項目では、「Ⅲ.特別重点項目 2.大規模災害時支援活動基本指針及び、関連諸規程の改定と周知」に取り組むこととして、「現状(2024年度当時)の『大規模災害時支援活動基本指針』『災害対策本部規程』、その他の諸規程および関連する規定等を、わかりやすく、かつ、一般的な要件に沿って整理する」ことを目的に「大規模災害時支援活動基本指針等検討ワーキング」(以下、基本方針検討WG)を設置して検討、「災害支援活動基本理念」「災害支援活動基本方針」、その後に「災害対策本部規程」「災害対策本部支援戦略班規定」「災害対策本部連絡調整班規定」「災害支援活動に関する規定」「災害支援活動人材バンク活用規定」「災害支援活動協力員マニュアル(改訂第2版)」「災害支援金運用規定」を策定して、理事会の承認を経てホームページに公開しました。

ここでは、基本方針検討WGの検討してきた経緯から、改めて本会と会員が意識しておくべき内容をお伝えします。なお、本会が参加する一般社団法人日本災害リハビリテーション支援協会(JRAT)の支援活動は、分けて考える(図1)ことをあらかじめご理解ください。

   

図1 他団体への参画連携のイメージ (引用・参考文献1)より抜粋)

 

本会の考える「災害」とは

本会の「災害支援活動の基本理念」では、「『災害』とは、定款上の『大規模災害等』」として、「被災地域以外からの社会機能と生活機能の復旧・復興に援助を必要とするほどの規模で生じた深刻かつ急激な人的及び物的損失をもたらす、またはもたらすことが予測できるもの」(下線は筆者)としました。このことは、「自然災害・人為災害・その他の災害」を含め、かつ「激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律」に指定された災害に限定することなく、本会が、災害として支援活動の対象とするものを明確にしている点に注目してください。

  

協会組織と会員ひとり一人が平時(災害が起こる以前)から「備える」こと

「災害支援活動協力員マニュアル(改訂第2版)」では、「Ⅲ.平時における準備」(図2)として「2.広く『災害支援活動』に資する情報の収集や研鑽に努める」ことを推奨しています。

地域社会振興部災害対策課が開催する「災害支援研修会」では、「災害支援活動の基本理念」等の本会の災害に対する考え方や具体的な災害支援活動に必要な知識の情報を提供します。特に、災害支援活動に関与する支援者の「こころのケア」についても考えます。本年度の研修会は10月31日に開催しますので、本誌第173号(2026年8月15日発行)または協会ホームページ(会員向け情報>地域社会振興関連>災害対策関連)を参照のうえ、ぜひご参加ください。また、各都道府県作業療法士会でもその地域に実情に合わせた、より現地の実践的な内容での研修企画を実施していますので、所属士会の情報にも注目してください。

なお、国(内閣府)でも「防災教育・周知啓発ワーキンググループ(災害ボランティアチーム)」の提言による地域人材育成の研修(避難生活支援リーダー/サポーター研修)を開催しており、令和8年度は15回34町村で予定されていますので、さまざまな情報を収集しながら研鑽に努めて実際の災害時の支援活動に参加できるように備えてください。

災害対策実践についての詳細な説明は各研修会等に譲りますが、本稿では一般原則として災害医療としてのCSCATTT(編注:発災後に医療支援チームが取るべき行動の7つの基本原則。7つの原則の頭文字を取ってこのように表記)を挙げておきます(各原則については図3)。誰もが災害が起こると即時に現地支援にという思いが大きくなりますが、組織的な対応と2次災害の予防等の原則を最低限、十分に理解して被災地域での支援活動に臨む必要があります。

図2 登録会員として平時から備える(引用・参考文献2)から抜粋)

 

図3 CSCATTT

 

被災地域の会員は「作業療法士ではあるが、被災者でもある」こと

「災害支援活動」と言うと「災害地域以外から支援活動に」という想定になりますが、被災地域の会員(作業療法士)も被災した状況のなかで業務を継続し、支援活動に従事しています。特に、被災住民が避難所から仮設住宅に移る等、生活の場が変わることで環境調整等にかかわる機会も多くなります。しかし、会員自身も被災者でありながら長期にわたる支援活動にもかかわることになります。こうした状況に置かれることは、燃え尽き症候群等の二次的、三次的な状況を引き起こすことが容易に想像できます。令和6年能登半島地震でも、作業療法士に限らず、能登地域の保健・医療・介護・福祉等の施設に従事する専門職の離職が、その後、大きな影響を与えたことは記憶に新しいところです。災害時には、被災者の生活環境の変化による阻害因子や生活そのものの活動制限、被災者のこころのケアに目が向きますが、作業療法士だからこそ自分自身の精神・心理的な状況にも目を向けることができることが、災害支援活動にあたっても重要であると理解しておきましょう。

本会としては、令和6年能登半島地震当時に会員からの要望がありながら、作業療法士の派遣等の支援活動ができなかった経験を改善し、被災地域の会員が自身と家族の安全、安心して、住み慣れた地域で生活できる場の確保ができるような、会員への支援活動も重要であると考えています。

 

むすびに

本会では、各都道府県士会の災害担当部署の活動を深化させ、その連携を強化するための情報共有の場を確保する等、組織的な支援活動の強化にも努めています。次にご報告いただく、香川県士会からの四国4県でのプラットフォームの取り組みや静岡県士会からの士会会員向けの取り組みも、ぜひご参考ください。

本会は、災害時対象者がその人らしい生活を営むことができるような作業療法を提供するために、平時からの災害への備えや支援体制の整備を進めていきます。会員の皆様のご理解ご協力をお願いします。

(元・大規模災害時支援活動基本指針等検討ワーキング担当理事 小林 毅)

 

〈引用・参考文献〉
1)山本伸一:大規模災害時支援活動基本指針の改定.日本作業療法士協会誌第150号.2024年9月
2)一般社団法人日本作業療法士協会2026年度第1回定例理事会資料:災害支援活動協力員マニュアル(改訂第2版)(案)
3)三村誠二:DMATと災害医療コーディネーター.月刊地域医学.Vol.39,No4.2025

 

 

四国内作業療法士会の災害支援の取り組みについて

近年、地震や豪雨災害等の自然災害が日本各地で頻発、激甚化しており、作業療法士にも災害時の支援体制の充実が求められています。四国地方では、以前から南海トラフ地震の発生が懸念されており、瀬戸内海を隔てて橋の使用や船での輸送ルートを考慮すると、本州からの支援には一定の時間を要し、発災直後は孤立する可能性が示唆されています。そのため、平時からの備えと四国内での県域を越えた連携の重要性が高まっています。

そのような背景のもと、四国では各県作業療法士会の災害対策委員が定期的に情報交換を行い、有事に迅速な連携が図れる体制の構築を目指してきました。そして、愛媛県の中村匡秀氏、高知県の畑田早苗氏の発案により、2021年8月12日に四国作業療法士会災害リハビリテーション連絡協議会が発足し、オンラインでの情報交換会が開始されました。

 

四国各県がつながるプラットフォーム

本協議会は、肩の力を抜いて誰でも発言できること、災害委員であれば代表者でなくとも参加できること等を特徴とし、より幅広い「顔のみえる関係性」の構築を目的としています。主な活動内容は、各県士会の事業計画や事業報告の共有であり、情報を共有することで自県の取り組みとの比較が可能となります。また、他県の取り組みを知ることで新たな視点が得られ、自県の活動を見直す契機にもなっています。さらに、後発の県士会にとっては、先進的な取り組みを行う県士会の活動が指針となっています。このような関係性は、災害発生時の迅速な情報共有や相互支援の基盤となるだけでなく、平時の活動を活性化する大きな力となっていると考えられます。

情報共有に加え、各県で実施される災害対策事業や研修会へ相互に参加することも、この連携の大きな特徴です。他県の事業を知り、誰でも参加できるようにすることで、それぞれの地域が抱える課題や工夫、運営方法を実際に現場で学ぶことができます。優れた取り組みや実践例は自県へもちかえり、地域の実情に合わせて取り入れることで、各県の災害対策の充実につながっています。

 

四国作業療法士会災害リハビリテーション連絡協議会の取り組みと具体的な成果

一つの県で生まれた工夫が四国全体へ広がることは、広域連携ならではの大きな利点と言えます。実際に2023年度には、香川県士会が主催する災害時の節水をテーマとした研修会に各県担当者が対面で集まり、「水を可能な限り使わない調理や片付けの工夫」を実践しました。また、2025年度には第34回四国作業療法学会に合わせて「防災キャンプイベント」を企画し、被災時を想定した簡易トイレの使用や段ボールを活用した簡易家具の作成等を体験しました(図4)。このように、他県士会の事業へ積極的に参加する取り組みも継続されています。

さらに、委員同士が気軽に相談できる関係性が構築されていることで、災害対策に関する悩みや疑問について、会議外でも日常的に意見交換が行われています。たとえば、令和6年能登半島地震における災害リハビリテーション支援活動では、既に活動を終えたチームから具体的な情報を得ることができました。後に続くチームにとっては、十分な情報がない状態で現地に向かう場合と比べて、不安やストレスの軽減に役立ったと考えられます。このように、県を越えた平時の情報共有・意見交換の体制が、それぞれの県の担当者を支える心理的な支援をする役割も担っていると言えます。

 

図4 防災キャンプイベントの会場

 

さらなる広域連携を目指して

災害時には、一つの県だけで対応することが困難な場面も想定されます。そのため、平時から互いの体制や役割を理解し、連携方法を確認しておくことは極めて重要です。顔を合わせたことのない相手と災害時に初めて連携することは、容易ではありません。一方で、日頃から会議や研修を通じて交流を重ねている関係であれば、必要な情報共有や支援調整も円滑に進めやすくなります。平時のつながりこそが、有事の対応力を高める基盤になると考えられます。

昨年度より、中国地方各県の災害対策委員とも関係性を構築するため、年2回のオンライン情報交換会を開始しました。中国地方と四国地方は県単位で相互支援を行うカウンターパート方式が定められており、ここでも顔のみえる関係性を築くことが有事の協力体制につながると考えています。今後も関係性の強化とベストプラクティスの模索を継続し、中国・四国地域全体で災害対策の質の向上を図り、災害対応力の向上を目指していきたいと考えています。

(香川県作業療法士会 災害対策特設委員 神田 智明)

 

 

静岡県士会の取り組み:会員被害状況確認の現状と課題

静岡県作業療法士会災害対策委員会(以下、委員会)では、静岡県内で発生した台風をはじめとする風水害に際し、理事会の指示のもと、メール連絡網システム「マ・メール」とGoogleフォームを活用した会員被害状況確認(以下、確認)を実施しています。本報告では、確認に関する現状と課題に対し、委員会がどのように考え、取り組んでいるのかを報告します。

 

明快な基準で迅速な初動対応

2025年9月5日、台風15号が県内を通過した際、牧之原市をはじめとする市町に竜巻被害をもたらしました。当時は理事会からの指示を受けてから確認を開始する体制であったため、開始までに3日を要しました。この事象から、従来の対応では初動対応の遅れや情報の空白期間が生じることが明らかとなり、初動の迅速化を図ることができるよう「委員会から県士会長へ直接上申し、速やかに確認を開始できる体制」へ変更し、確認の発信基準を「県内の被害状況が確認された場合」としました。

2026(令和8)年台風6号の県内接近・通過に伴い、伊豆地方では線状降水帯が発生しました。委員会では、報道や静岡県ホームページを通じて情報収集を行っていましたが、被害状況が明らかになったのが台風通過から2日後であったこと、また被害戸数が少なかったことから、この時も確認開始の判断が遅れる事態となりました。この基準では委員の主観によって判断に迷いが生じやすいことが判明したため、基準を見直し、「①台風が県内付近を通過または上陸した場合、②防災気象情報でレベル4(危険警報)が発表された場合、③線状降水帯が発生した場合」に変更しました。

2026年台風7号・8号では、事前の気象予報をもとに進路予測を注視していました。台風8号が先に県内へ最接近し、下田市で防災気象情報レベル4(土砂災害)が発表されたため、新基準に基づいて理事会へ上申しました。この際は基準が明確であったことから、確認開始の判断を円滑に行うことができました。しかし、その後の議論において、基準①の「県内付近を通過」という表現には解釈の幅があること、また基準②および③については局地的な発表の都度確認を行うことが運用上困難であることが課題として挙がりました。そこで理事会において再検討を行い、「県または市町に災害対策本部が設置された場合に確認を実施する」というシンプルかつ明確な新たな基準で運営できる体制としました。

 

被害状況確認体制の運用と課題

現在、静岡県士会では、確認開始から72時間までの情報を日本作業療法士協会へ報告しています(図5)。また、会員に対しては24時間後、48時間後、72時間後の結果を発信しています。しかし、委員会内で、発災後の情報過多や、会員側の確認作業が煩雑になることを懸念する声が挙がっています。そのため、今後は「初動報告後と72時間後または1週間後の計2回とする案」や「状況が安定した段階で報告する案」等を提案し、協会主催の災害シミュレーション訓練(以下、訓練)のなかで検証していく予定です。

図5 静岡県士会から協会への安否確認報告メールの文面例

 

委員会では、訓練の機会を活用し、「PDCAサイクル(訓練計画→訓練実施→訓練方法の振り返り・回答率の分析→次回に向けた訓練方法の見直し)」を意識して活動しています。毎年同様の訓練を継続するだけでは、対応が特定の事態に限定され、さまざまな状況への応用力が十分に養われない恐れがあるため、毎回少しずつ計画や想定を変更し、多様な事象に柔軟に対応できる体制を構築することが重要であると考えています。

現在、会員のマ・メール登録数は全会員数の3分の1程度にとどまっており、情報が十分に行き届いているとは言えない状況です。委員会では登録数の増加を目指し、新人オリエンテーションでの周知に加え、学会発表等を通じて認知度向上に努めています。地道な活動ではありますが、引き続き登録促進に取り組み、大規模災害等に備えた体制整備を進めていくことが重要な課題です。今後も訓練による検証を継続しながら、より実効性の高い災害対応体制の構築を目指していきます。

(公益社団法人 静岡県作業療法士会 災害対策委員長 小川 正洋)